複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【四章完結】 ( No.167 )
- 日時: 2012/09/08 18:08
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
3・飼い主のような男。
「……何でおれをこんなとこに」
男について行ってドームに入ると、そこにはたくさん椅子があった。それの一番前に、大きな画面があって、ステージがあった。辺りは暗くて、椅子のほぼが人で埋まって居た。
その人たちは楽しげに話しあいながら、画面に意識を向けている。
何だか楽しそうだ。これが祭り、って言う奴かな。
それにしても、祭りでも何でも、どうしておれなんかをこんな所に。
おれは何だかここに居ることが恥ずかしくて、男の背中に身を隠す。まだおれは小さいからすっぽりと男の影になった。
みんな、普通に生きてきた人たちだ。おれみたいに、道路の隅で寝てごみを食って水たまりを啜って来た人間じゃない。
もっといえば、この男だって。
この男は首に色んな宝石が付いた紐をぶら下げているし、おれに服を着させたしきっとお金をたくさん持っているんだ。
「黙っていろ」
まただ。コイツの声は何だか苦手で、おれの骨の中まで入ってくるような、絶対従わなければいけないような感覚になる。
おれはその声に従うように口を閉ざす。いろんなことを聞きたい。なんでおれをこんなところに連れてきたのか。なんでおれに服を着せたのか。なんでおれを連れて歩いているのか。
おれが街で気絶させた2人みたいに、怖い感じとか危険な感じはしないから逃げたりはしない。コイツと一緒に居れば、ゴミじゃなくなるような気がする。
男は、2つ並んであいている椅子に座っておれの隣に座るように促した。
ふかふかの椅子に腰を下ろすと、ドキドキした。
今から、何か始まるんだ。知らず知らずのうちに揺らしていた両足を、男がちらりと見た。
おれはずっとステージを見ている。こんなこと、初めてだから。こんなところに来るなんて、昨日のおれは想像もしていなかった。
『皆様、お待たせしました』
壁の両側から声が聞こえる。なんだろう、これ。初めてだ。耳が変な感じがして、壁を交互に見る。すると、ステージに光が灯った。おれは壁なんてどうでも良くなって、ステージに釘付になった。
みんなの声が大きくなる。みんな、ドキドキしてるんだ。
おれもおれも。
『今回の商品は予告していた通り、上玉ばかりです。皆様、ご期待ください』
そういって、光を一斉に浴びる男の人が頭を下げた。
あの人、スーツを来ている。すげぇ。あれ、高いんだよな。おれ、それは知ってる。
いろんなことを男に話したいけど、喋っちゃいけないって言われたから言わない。
男の人の礼に、たくさんの人が拍手を送る。おれも倣った。
男の人がステージの脇に寄ると同時くらいに、反対側から同じスーツを着た男が、鎖で手を縛られた子供を連れて出てきた。
『まずはこちら。ホワイトドッグとのハーフ。メスです。まだ性経験は無いのでそちらも好きなように改造してください』
〜つづく〜
三話目です。
最近書きにくいです。