複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.172 )
- 日時: 2012/09/21 19:42
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
8・催促のような伝言。
ベッドの上で赤女が帰ってくるのを待っていると、窓ガラスをノックされた。ベッドから立ち上がって、少し警戒しながら窓に近づく。
クイーン・ノーベルが建てたこの白い城は、豪華だ。それはもう、ハラダ・ファン・ゴの本社よりも大きい。何の材料でできているかは知らないけれど、シミも汚れもないつるつるしていて、優しくて、冷たすぎない素材の壁でできている白は、俺も嫌いじゃない。
下は確か川で、ここの部屋は相当高いはずだ。
一体なんだろう。
開けた窓の先には、金髪を垂らしてこちらを見ている懐かしい顔があった。逆立ちをしているようで、なんだか間抜けだ。
「ミーニャ」
名前を呼ぶと、ちょっと驚いたように青い目を見開く。
そして、薄く口紅を塗った形の良い唇で笑う。
「憶えているなんて、ちょっと意外だわ」
最初会ったときは、年上って感じで、大人の空気を纏っていたコイツも、なんだか今はとっつきやすくなったと言うか関わりやすくなったと思う。
それも、あの町でも赤女の件で御世話になったからだ。
俺はあの時、なんであんなに慌てていたのだろう。今思い出すと恥ずかしい。でもミーニャはそんなことで俺をおちょくったりしないから、好きだ。
「まぁな。で、どうかしたのか」
体勢が辛そうで、どうやってそれを保っているのかは分からないけど部屋に入りたいなら言うだろうから、あえて部屋に入れない。
ミーニャは歪めていた唇をもとに戻す。
仕事だからだろう。本当に、よく出来た女だ。コイツを雇っているのは一体誰なのだろう。仕事をきっちりこなす姿勢とか、完璧だから俺もいつかミーニャに何かしてもらいたい。
「貴方のご主人様から伝言よ」
ご主人様、というわけではない。でも、そういわれて浮かぶのは一人しか居ない。
クオだ。背の低くて、いつも背後にユコトを従えている、怒ると意外と怖いクオ。俺を拾った人。俺が従う唯一の人物。あの人にはたくさん迷惑をかけたから。
「『雷暝から話は聞いた。いろいろ大変だろうけど、早くゴールデンアームスの件に向かってくれ』」
クオとは違う声だけど、クオが言って居る姿がちゃんと浮かぶ。きっと、呆れたような顔をしながら、でも楽しそうに言っているのだろう。
アームスは俺の嫌いな奴だ。付き合いづらい。できれば関わりたくない。アームスとクオの関係は知らない。
でも、アームスもとりあえずはクオのお世話になっているようだった。クオの浮かべるすべてを威圧する笑顔に怯えていたから。
ちなみに俺もあれは怖い。
俺は赤い髪を掻いた。
「……分かった」
〜つづく〜
八話目です。
久しぶりにライアーさん。