複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.179 )
日時: 2012/10/04 18:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)



15・子供のようなレドモン。


名前は私だった。私は名前だった。

全く、なんでこんなに可愛くない反応をしてしまうのだろう。もっと可愛い反応ができたら、私ももう少しは変われたのだろうか。
私は自分の嫌なことを思いながら自分の金髪を手で掻き毟る。
自分のこの金髪も、嫌いだった。美しくなくて、ちょっとくすんでいて、毛先がくるっとしているようなバサバサしている金髪。
こんな髪は、大っ嫌いだ。
私には母も父も居ないが、ただ一人だけ、弟がいる。弟も自分と同じような金髪だったのだが、私と同じなのが嫌だと言って赤茶色に染めてしまった。
それが彼の最後の反抗で、それ以来弟は私に大した反抗は見せていない。でも、彼が私を嫌っていることは明白だ。それはいくら私でも分かること。
なんで、嫌われてしまったのだろうか。そんなことを考えるのはもうとっくの昔に止めてしまった。

「レドモンさん、どうかしたんですか」

そんな苛立っている私に話しかけて来たのは、剣の腕を買われて入団した後輩だ。同じ隊長のもとで働いている、剣の腕を著しく成長させて居る後輩。後輩というのは入団した時期で言っているだけで、そろそろ彼が私よりも強くなってしまうだろう。そうなったら私は後輩の指示に従うことになる。そうなったら私は耐えられないと思う。だって、そんな事は私のプライドが許さないからだ。そんなことにはしたくないけど、そうなってしまったらどうしよう。
私は凡人よりもそりゃあ腕は立つし、頭の回転も速いと言われてきた。でも、少しだけだから。凡人の中で目立っても、天才の中では目立てない。
それが私。その程度の私。

「……いやになるよ、全く」

「何がですか? レドモンさんは折角美人なんだから、笑顔になったら良いと思いますけど」

後輩はそう言いながら、私を見上げてはにかむ。後輩は男にしては背が小さいから、どうしても私を見上げる形になってしまうのだ。
私は自分の髪の毛から手を離して、腕を組む。固い印象を与えるためだ。私が緊張感を持っていなければ、きっと舐められてしまう。自分に甘くなってしまう。そうしたら、どんどん私の立場は後輩たちに奪われてしまう。
私は後輩を睨めつけて、大げさにため息を吐いて見せた。従うつもりはないと、言いたいだけ。
何だか強がっているようで、恥ずかしい。

「そんな甘いことを言えるなんてお前は幸せ者だな」

「ほら、そうやって男っぽくするからいけないんですよ。ねぇ、今度俺と出かけませんか? 女の子っぽくなれるように、協力しますよ」

くだらない。私はそう思って、最後にもう一度後輩にため息を吐いて、その場を立ち去ろうとする。
後輩に背を向けた時に、声がした。後輩の、ふざけたような、バカにしたような声。

「あーあ、そんなんじゃ隊長に認めてもらえませんよ」


〜つづく〜


十五話目です。
最近背骨が痛い。