複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.181 )
- 日時: 2012/10/13 11:41
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
17・反省のような決意。
名前が、名前が名前が。私は名前の。
自分の部屋のクローゼットを開いてみる。
騎士団に所属している人が自由に使える寮の一室を私は借りているんだけど、私には今まで日常が存在していなかった。私にあるのは何時だって、騎士団の中で生きる正義の塊である私だけで、部屋でやることと言えば寝ることくらい。修行をした後はそりゃあ眠いから、何にもする暇がないくらいに、じっくりと眠る。そんな毎日だったから、当然のごとくクローゼットはガラガラだ。
私は、毎日、棒に振って来たのだろうか。
いまいち、正直に言えば剣の腕は上がらない。騎士団の中で、大きな成果をあげられる訳でもない。重大な任務が任せられる事もない。私はまだ、この騎士団に入った意味を実感することができていない。それでも、私にしかできないことがあると信じて今まで生きてきた。毎日を剣に捧げてずっとずっと騎士団に居るつもりだった。
でも。今、なんだか変な気分になっている。どうだ。私これから先、大きなイベントがあるだろうか。先の見えない何かに向って。ずっと熱心な感情を抱き続ける事ができるだろうか。
そんなのは、無理なのかな。私はどうせ、諦めてしまうだろうか。私はどうせ、中途半端で終わってしまうのだろうか。
気が付けば、木でできたクローゼットの扉を持っている手が震えていた。
「レドモンさん? どうかしたんですか?」
そんな私に向かって、後輩は近寄って来る。
ここが一応女である私の部屋だって事に気が付いていないのかってくらい、自然に。私は、こんな後輩にさえ女として見られていないのか。
私は今日、初めて休みを貰った。後輩の言葉に躍らせれて、街に買い物に行くのだ。隊長に、興味を持って貰うために。
私は後輩が近づいて来るのを拒まない。すっかり私はコイツに心を開いてしまっているようで、今もこんなに情けない姿を見せてしまっている。
こんなことではいけないって、以前の私なら思っていたはずだ。それなのに。
私はこんなに今まで盲目的に頑張って来たのに、そんなのをこんな一瞬で変えてしまったのだ。まだ、今なら戻ることができる。戻るのかな。私は戻ったら、どうなるんだ。これからもずっと、正義のために女を捨てるのか。
私は昔、近所の人たちに美人だといわれた。悪い気はしなかったけれど、正直興味は無くて。
ああ、そうか。そうだね。私は昔から、正義にしか興味が無かった。こんなことをするのは、私じゃないよな。こんなことをするのは、私じゃない。やっと分かった。私は何を迷っていたのだろう。私は、正義のために生きれば良い。そのために私は生きている。
隊長にも、振り向いてもらえなくても良い。私には、正義さえあれば。
手の震えは止まっていた。
私はもう側まで来ていた、後輩の方を向く。
「……ごめん。やっぱり私には、そういうのは向いてないと思う」
〜つづく〜
十七話目です。
頭の中のとちょっと変えます。