複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.185 )
- 日時: 2012/10/13 13:40
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
19・支配のような利用。
朝はぱっちりと目が覚めた。
手早く少ない荷物をまとめてライアーの部屋に行こうとすると、すでにライアーは白い廊下の上に立っていた。私は急いでライアーに駆け寄る。
「おはようございます」
「ん。じゃあ、行くか」
ライアーの顔は、出会った当初よりも柔らかくなったような気がする。私に心を開きかけてくれているのだと思う。初めは私の話を聞くのも私に話しかけるのもめんどくさそうにしていたけれど、今はそんなことは無い。
そりゃあ普通の人に比べればめんどくさそうだし、冷たく見えると思うけれど、私はこのままのライアーでも別に良いと思うから。
私は歩きだしたライアーの後を追う。これから、ゴールデンアームスっていう人に会いに行く。
いろんな人に関わるようになった。ある程度は、人の扱いに慣れてきたと思う。まだまだだと思うけれど、私にとっては大きな進歩だ。
もっともっと、立派で、ちゃんとした人間になって凪に会いたい。それで、叱ってやりたい。自信を持って、謝りたい。
白い扉に手をかける、ライアーの黒い手袋。私はその隣に、赤い手袋を付けた手で手を添えた。
対等な立場じゃ無い。私とライアーの距離はまだまだ遠い。でもいつかはきっと。対等な目線で。ライアーにも頼れるような人間になってみたい。今まではそんなことは思わなかったけれど、今ははっきりとそう思う。
誰かを守りたいって。誰にも守られたくないって。
「黄金の両腕のいる西の草原までは遠いから、飛行船に乗る」
そこまで行って、ライアーがちらりと私を見た。私は軽く頷く。
それで問題は無いかって、確認を取ってくれているのだろう。別に、問題は無い。
一人でハンターをやっている頃は、全部徒歩で移動していた。でも、空が怖いなんてことは無い。飛行船なんて乗るのは初めてだから、ドキドキしてわくわくしているくらいだ。
こんな機会、めったにない。私には飛行船に乗るだけの金銭的な余裕がなかったから。
「飛行船に乗るのは初めてですよ」
町の中心にそびえるクイーン・ノーベルの白い城。そこからしばらく歩いた街の隅に、飛行船上はあった。
海の上にギガントが浮いている。大きな翼をしているが、全く動かしていなくて折り畳んでいた。皮膚は滑らかで大人しそうな可愛い顔をしている。魚に近いから、水面に腹をつけているのかもしれない。こんなギガントを見るのも初めてだ。
そのギガントの上に、船のような物が取り付けられている。そこから伸びる橋から、ぞろぞろと人が乗り込んで行った。
人に危害を与えるビーストを殺すのがハンターの役目。でも、なんだかんだ言って人間は大人しいビーストは生活の一部に利用してきた。
身勝手だ、なんて。
ギガントの大きな瞳を見ながら、私はライアーの後についていく。逸れないように気を付けないと。
そうして私は、飛行船に乗り込んだ。
〜つづく〜
十九話目です。
そろそろあの人たちが。