複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.186 )
- 日時: 2012/10/13 21:50
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
20・親友のような友人。
お金持ちのライアーは金を惜しむことなく使って、部屋を借りてくれた。私の分も。親切だな。私は別に大部屋で知らない人と寝るってことでも良かったのに。でも、それよりかはそりゃあ個室の方が良いけど。
私たちはそれぞれの部屋を確認しあって、荷物を置いて船内を探検することになった。なんでも、ライアーは飛行船には乗ったことはあるけれど、この飛行船は初めてらしい。
空を飛ぶことができるギガントに船のようなホテルのような物を付けた、飛行船。それがどうやら珍しいようで、心なしかライアーの目もキラキラしている。
まずは、船の先頭にある食堂に行ってみた。まるいテーブルがたくさん並んで、厨房の近くはガラス張りになって居て、調理をしているところを見る事もできる。
その中では白い高い帽子をかぶったコックさんたちが忙しそうに料理をしていた。頼めば何時でも料理を出してくれるらしく、テーブルには数名の人たちがすでに座っていた。
私はお腹が空いている訳でもないので、ライアーから離れて食堂の一番奥に走っていく。
そこは展望台のように全部がガラスで遠くを見渡すことができた。
私はピカピカのガラスに手を付けて、顔を近づける。
「おお……」
私が歓声を上げるとほぼ同時に、ギガントの翼が動き始めて、私の目の前の景色が上昇していく。動き始めたんだ。
私の人生初めての空中旅行が始まったのだ。クイーン・ノーベルの城が小さい。灰色の町に囲まれたクイーン・ノーベルの白い城がどんどん離れていく。
じゃあね、凪。
私は心の中で凪を思いつつ、視線を上げる。私の隣にはライアーがすでに来ていて、私と同じように景色を楽しんでいるようだった。
「たっけぇ」
「ですねぇ」
呑気にそんな短い言葉を交わしながら、飽きもせずにただただ景色を眺め続ける。
青い海。水色の空。青い海で、見たことのないギガントが泳いで居るのが見える。すごいなぁ。こんなに世界は広いんだ。そして同時に、小さい。それを思い知らすかのように、ギガントの翼は止まらない。
私たちの周りにはいろんな人が来ていた。景色を見る人や、ライアーを見て、目を丸くしている人もいる。
ライアーは一応世界的に有名なハンターだし。戦っている姿をはっきりと見たことはまだない。でも、やっぱり有名なのだから、強いのだろう。
私はライアーの服の端を掴んで、引っ張った。
「あの、人が多くなってきたので、場所を移りませんか」
ライアーは周りをちらりと見て、眉を顰めた。
この人もしかして、人が増えているのに気が付かなかったのかな。まさか、そんなはずはないよね。
私は、人が多いところはあまり好きじゃない。だって、なんかうるさいから。賑やかなのは好きだけど、他人が多いのは気に入らない。
我儘だと思うけれど、ライアーは私に同意をしてくれた。
ライアーに続くように、食堂に入って来た扉を振り返る。
すると、扉の近くにはスーツをしっかりと着た男の人が立っていた。
あ、この人は。忘れるはずもない。ハラダ・ファン・ゴでお姉さんをいじめていた人。急に態度が急変して恐怖を感じたことを思い出す。
男の人も、私とライアーを見て驚いた顔を見せた。
その隣には、あの日と同じように、透き通る水のような色をした長い髪を持つ、少女。
「……ジャルド」
ライアーを見て、ジャルドは赤と黄色と白のストライプのネクタイを軽く緩めた。
〜つづく〜
二十話目です。
お久しぶりですね、このペアはw