複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.187 )
- 日時: 2012/10/14 11:43
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
21・紳士のようなジャルド。
「久しぶり。あれ、貴女は」
豹変する前の優しい紳士のような態度と、顔でジャルドは私の方を向く。私はそれが何だか不気味で嫌なので、眉を顰めた。
それより、ライアーがこの男、ジャルドを知っていることに驚いた。昔に、何かあったのだろうか。知り合いなのかな。
ジャルドは私のことを覚えていたのか、私に近づいてくる。隣の少女は、私と同じような顔をしている。
怪訝そうな表情。ハラダ・ファン・ゴで初めてて会った時も、こんな顔をされたような気がする。よく覚えていない。
あのときは、お姉さんを助けようと必死だったし、ジャルドが怖かったから。
「なんだ、ジャルドと会ったことあんのか」
ライアーは私の見下ろしながら、差し出されたジャルドの手を握って握手を交わす。そんな親しい間柄なのか。
ジャルドは、ライアーと私を交互に見ながら、にやりと口元を歪めて見せた。
もう何度か言われているから、掛けられる言葉は予想できる。
「ライアー、女か」
「ちげぇーよ。ロリコンジャルドに言われたくねぇな」
やっぱり言われた言葉に対して、初めてライアーは嫌そうにしなかった。相手がジャルドだからなのか。相手によってこんなに態度が違うとは思わなかった。ライアーもしっかりと付き合う相手によってはこんなにも優しくなれるんだな。
私は男二人の会話についていく気には慣れない。
でも、ライアーとは仲が悪いわけでもなさそうだし、むしろ関係は良い方だと思う。
私はジャルドと争う気はないから、手を差し出した。一応、掌はズボンで何度か拭いておく。汚いかもしれないから。
意外にもジャルドは素直に私の手を握ってくれた。高そうな腕時計が付いて居る。多分この人もライアーと同じようにお金持ち系の人だ。スーツの生地も高そうだし。
怪しいくらいに、優しく手を握るものだから、なんだか照れくさい。
「雪羽です。色々あって、ライアーさんと一緒に行動してます」
色々、の詳細は語らない。くだらないと鼻で笑われそうだし、実は色々の中身がスカスカだということを突き付けられそうだったから。
ジャルドの顔に視線を戻すと、なんだか楽しそうに笑っていた。
少女は相変わらず私を凝視していて、視線が痛い。私はそれを紛らわせるために、ジャルドと握った手を上下に振った。
「俺はジャルド。よろしく。ほら、カンコ」
ジャルドの自己紹介はハラダ・ファン・ゴで聞いたから別にしなくても良かったのに。
ジャルドに催促されて、隣の少女は嫌そうにしながらも薄い小さな唇を開く。
何だか、きれいな子だ。この世界に居ないような、絵画を見ているかのような感じ。不思議な雰囲気をまとった子。小さいのに妙に大人びていて、影を知っているような美しさ。
「……カンコ」
短くて、ジャルドが言うだけで良かったんじゃないかと思うけれど、ジャルドは満足そうに私から手を放してカンコの髪を撫でた。
〜つづく〜
二十一話目です。
これで152話かな。半分切りましたねw