複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.190 )
- 日時: 2012/10/17 22:57
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
24・暑さのような熱さ。
ライアーが私の代わりに頼んでくれたアベンダという酒。
私はコップを傾けて、そっと唇を酒で濡らしてみた。何だか、黄色っぽい、明るい色の、お酒。
コップの淵には赤い実が付いていた。私はとりあえずそれを口に含んでみた。何だかその木のみは食べたことがあるのに、違う味がした。酸味があるはずなのに、それが消えて甘い味が追加されてるような感じ。
私は決意を決めて、一口そのレモン色のアベンダを飲んでみた。
舌をびりっと刺激して、喉を通過していく。アベンダに触れた喉が、口が。すべてが熱を発して熱くなっていく。
不思議な感覚に、頭がぼうっとした。
「あー、私お酒飲むの初めてです」
「まあ、だろうな」
アベンダと同時に運ばれてきたショッキングピンクの派手なお酒のシェリアを、ジャルドは煽って見せた。
私も負けじとグイッと飲みたいところだけど、アベンダはそんな風に飲むお酒じゃ無いと思う。もっとじっくりと時間をかけて飲んでいくお酒だと思うから、私は小さくコップの中で小さく波を立てながら、私と同じように大切にシェリアを飲んでいるライアーの方を向いた。
「おいしいです。ありがとうございます、ライアーさん」
私はコップを両手で優しく包んで、ライアーに微笑む。すると、ライアーはお酒を一口飲んで、軽く頷いた。
私はライアーの方に手を伸ばして、その手の中からコップを取った。私の行動に、ライアーが驚いて居る。でも、怒るわけではないようだ。
私はライアーに目線を一度合わせてから、コップを傾けた。
アベンダよりも熱を含んだ、シェリア。予想もしなかったその熱さに、私はむせそうになって、耐える。
アベンダを超える頭への衝撃で、ぐらりとした眩暈を覚えた。
私はそれを無事に胃へと送って、ライアーにコップを押して戻した。
「強いですね」
「貴女はきっとお酒が弱いのよ。無理しない方が良い」
ジュースをストローで子供っぽく啜っていたカンコがいきなり私に絡んできて、思わず心臓が跳ねる。
私はアベンダで口の中を洗う。そしてから、カンコの方に顔を向けた。
カンコはストローを唇で挟んで私を見上げている。
「そうなのかなー。カンコちゃん、ちょっと頂戴」
私は恐る恐る、だけどそれを顔や態度に出さないように気をつけながらカンコに笑う。
意外にも、カンコはあっさりと私の方にストローを向けた。私は少し屈んでストローを口に咥える。
昔呑んだ懐かしいジュースの甘さが、ひりつく喉を癒してくれる。
私の全部の行動を、カンコは相変わらず監視でもするかのように見ている。ちなみに、そんなカンコを、さりげなくジャルドは気にかけている。
愛されているんだなぁ、きっと。
私はストローから口を離した。
「ありがとー」
「……うん」
私からストローを返された時に、カンコは初めて私に小さくも笑顔を見せた。
〜つづく〜
二十四話目です。
お酒って(以下略