複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.205 )
日時: 2012/10/27 15:22
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



38・殺人鬼のような吸血鬼。


「くっ、そ」

「……まじですか」

私の言葉を本気にしたバカたちは、本当に暇そうにしている奴を連れて着やがった。
真に受けすぎでしょ。冗談のつもりだったのに。
数人に押さえつけられているこの男は、フードをかぶっていた。私はそっとフードに手をかけて、脱がせた。その中の髪は、不思議だった。
半分で色が分かれていた。青と黄色。そして、目も。目は、髪と色が違った。黄色と青。あべこべというのか。凄い色だな。凄い色だ。
私を必死に睨みつけているけれど、弱弱しい。汚れが酷いから、遭難しているのか、貧乏人か、奴隷か。
まあ、時間があることは確かだろうな。

あべこべ男は、騎士団の部下たちの腕を振り払おうとして要るけれど、力が上手く出ないのかそれは叶わない。
そして、連れて来たもう一人の男に手を伸ばそうとして居た。
片方の男の方が元気はなく、ぐったりと地面に倒れこんでいた。抵抗する気もないようで、呼吸を大きくしている。

「そんな暴れるとコッチの坊や殺しちゃうけど」

私は、できるだけ声を冷たくして見た。そうしたら、あべこべ男はゆっくりと力を抜いていく。
それで良い。素直な奴は嫌いじゃない。
私はちらりと倒れている男を見てから、話を続ける。

「悪いね、手荒い真似をして」

「……あんた、アスタリスクの仲間か」

アスタリスク。なんかどこかで聞いた事があるかもしれない。私はでも、首を傾げて見せた。知らないと言うことにしておいたほうが良さそうだ。敵対関係にありそうだから。
私はこういう判断が早い。なんてったって正義だから。正義は強くなくちゃいけない。私のポリシー。
私の反応で、あべこべ男の殺気が弱まる。
ギンギンに殺気を私に向けている。怖いな。これだけで殺されそうだ。でも、私はかなりの人間やビーストと戦ってきた。まだまだこれ以上の殺気を浴びたことがある。
だから結局、どうってことは無い。余裕そうな私を恨めしそうに、あべこべ男は見上げている。
良いね、この優越感。大好きだ。
人の上に立つことは、気持ちが良い。

「私たちは実は困っていまして、戦力が欲しいんです。でも、あんたたち二人じゃどうもなぁ」

そう。こんな弱弱しい二人が増えたところで、盾にしか使えない。私はこんな弱い奴は必要とはしていない。私が欲しいのは、もっと役に立つ人材であり、ゴミじゃない。
私の言葉に、周りの兵士たちがびくびくとしている。役立たずを連れてきたって怒られると思っているのか。そんなことはしない。
流石にこれ以上減るのは避けたい。

「……俺たちは、カーネイジ・マーマンだ」

「……へえ?」

まさか、ここでその名前を聞けるとは思わなかった。
私でも知って居る。カーネイジ・マーマンは、街に現れては人を大量に殺していくと言うことで危険視されている犯罪者たちの名称だ。
騎士団にも何度か不安の声が上がっていたのを思い出す。確か、四人組だったはずだったけど。逸れたか、仲間割れか、死んだか。
どれだろうか。最近被害者は出ていないと聞いていたけれど、こんなところで弱っているとは知らなかった。
これを連れて帰ればなかなかの手柄なんじゃないだろうか。

「だから、使えると思う。その代り、」

私は次の言葉を待つ。
さて、殺人鬼、カーネイジ・マーマンの一人はどんな要望を提示するのか。
楽しみだ。

「腹が減っている、血を寄越せ」

あべこべ男が口を開くと、鋭い犬歯が二本、きらりと光った。


〜つづく〜


三十八話目です。
つなげていきます。