複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.206 )
- 日時: 2012/10/27 20:29
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
39・偶然のような奇跡。
目を開けると同時に咳込んでしまった。急いで体を起こす。頭がくらくらする。体が浮いているかのような感じで、すごく変。
アレ、ここはどこだ。寒い。私の体にかかっている布は結構しっかりとして要るけれど、この建物が寒いんだ。テントのような、気の骨組みに布がかぶさったような感じの簡単な建物。ドアは無くて、布をめくって中に入るようだ。床にも布が敷いてあるけれど薄く、すぐ下の石が分かるくらいだ。
私が立ち上がろうとした時、テントの入り口が捲れた。
「あー……あっと、」
なぜか私を見て口ごもるその人。なんだろう。なぜだかおどおどして居た。
緑っぽい黒髪。深緑と言えるほど、緑の色素が高いわけでも無い。頭から垂れた二本の髪の束には、髪飾りが付いていた。
何とも言えない、初めて見るような格好の男の子。私より背が低い。カンコくらいだろうか。
体つきはしっかりとしていて、上着の前から除く腹筋はしっかりと割れていた。
「お、おれは、っ、燕って、言う」
顔を真っ赤にさせて、なぜだか怒鳴るように自己紹介をされてしまった。その人はおどおどしたままで、私と目を合わせたと思ったら逸らしたりして、忙しそうだ。
「私は、雪羽です」
私もつられて挨拶をしてしまった。燕は後頭部を手で掻き毟って、私をちらりと見る。そして逸らす。
何がしたいんだろう、この子は。
私はとりあえず布団から起き上がる。その様子に、なぜか燕を身構えた。
私は床に正座をして、深く頭を下げる。
「助けてくれて、ありがとうございました」
死を覚悟していた。私にはその道しか残されていないのだと、そう確信して居たのに。それなのに、こうして息をしている。助かるのはもう何度目だろう。私がこうして助かったのは、何かの間違いなんじゃないだろうか。そう勘違いしてしまうほど。
私、なんで助かったんだ。いや、そんなことを考えてはいけない。生きていることに感謝すべきだ。
私は顔を上げて、辺りを見渡す。
「べ、別にいいぜ、気にすんなよ。あ、もう一人の奴なら、別のとこ。安心しろよ、お前と同じくちゃんと生きてるし、もう目を覚ましてる」
燕はもうおどおどせずに、しっかりと言ってくれる。その頼もしさが眩しすぎて、俯いてしまう。
キラキラしている人を見ると、どうも、駄目だ。お姉さんや、凪や、アスラや。みんなみんな、きらきらしているから。すごく、羨ましすぎて、怖い。私が生きているのが恥ずかしすぎて、怖い。私
は、生きてていいのですか。カンコも、生きていてくれて良かった。私だけ生き残ったなんてことじゃなくて、良かった。本当に、良かった。
安心しすぎて、涙が出そうだった。
「いやーお前らどっちもおっぱいちいせーなぁー」
泣く前にコイツ殴ろう。
〜つづく〜
三十九話目です。
貧乳とか良いじゃないですか。