複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.212 )
- 日時: 2012/11/04 11:02
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
45・大人のようなカンコ。
とはいっても、あんまり豪華な物はごちそうできない。燕はそんなことを申し訳なさそうに言った後、再びテントを出て行った。
確かに、お腹は減っている。カンコもそうみたいで、何も言わない。
カンコは髪と服の乱れを直して、湯気を失ったカップを私に差し出した。中には、赤茶色の液体が入っていて、何かの葉っぱが底に沈んでいる。
見たことないお茶だ。香りも嗅いだことがない。
「毒は入っていない」
カンコは、お茶をじっと見つめる私を見て、私がお茶を警戒していると思ったのか、お茶について補足をしてくれた。私は頷いて、お茶を口に含む。
少し苦いし、温いけど、喉をしっかりと滑っていく、ちゃんとした飲み物だ。
草原の中で、しかも戦争をしていて、忙しいだろうに、私たちの面倒を見てくれるなんて。普通に考えたらおかしい。何か裏があるに違いない。
でも、でも。
「雪羽、あんまり警戒を解かない方が良いよ。人は、怖い」
ずきりと心差すような言葉。
私より小さいカンコが、私よりもそんな事を知っていて、理解しているなんて。こんなこと、カンコのような子供が、知っていることじゃない。こんな汚いことを理解してるなんて、思いたくない。
私は、何度も頷く。声が出ない。苦しい。
私が、情けなくて。カンコにすら、注意をされて、心配をされて。私もしっかりしないと。
早く、ジャルドにカンコを届けないと。そして、謝らないと。こんなことして、ごめんなさいって。守れなくて、道連れにしてごめんなさいって。
私が俯いているのを見て、カンコはどんなことを思っているのだろう。きっと、情けないって思ってる。頼りないって、思ってる。私自身も、思っているから。
だからこそ、しっかりしないと。自分のことを分かっていないよりは、きっと、ずっと良い。
私は顔を上げる。私の情けない姿を、カンコはしっかりと見ていてくれた。目を逸らさないでくれた。私に、失望しないでくれている。
そう。私はまだ頑張るから。だから、見ていて。私が大きく慣れるまで、この世界の汚い部分まで見られるようになるのを、見ていて。私を、見ていて。
私はもう、一人じゃない。私を見てくれる人が居る。
私を待っている人が居る。
「雪羽、頑張ろう。一緒に、一緒に」
カンコは、感情が豊かじゃない。表情も少ない。でも、言葉で表してくれる。私は、カンコがもっと、人形みたいな子だと思っていた。違った。全然違った。私よりも強くて、大きくて、人間らしい。
カップを床に置いて、またカンコの肩に手を置く。力を込める。
一緒に、頑張ろう。そう言ってくれたのは、カンコだ。
「……カンコは、強いね」
私は、また泣きそうになっているのにさ。
〜つづく〜
四十五話目です。
今更ながらあの花の小説を読んで、最終回だけアニメを見ました。
ボロボロ泣いてしまってやっぱり友達っていいって思えました。
ずっと昔にみんなで作った秘密基地は、もうないです。