複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.226 )
- 日時: 2012/11/22 17:40
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
59・弾丸のような銀。
「……あれか?」
「いや、違う」
クオが言っていたには、ゴールデンアームスが居る草原はコッチじゃなかった。
とすると、前方に見えている大きなテントと、それを囲むようにある小さなテントの軍団は、アームスたちが争っていると言う相手の群だと思う。つまり、敵。
敵から説得するかな。
どうする。考えろ。俺は今一人じゃない。ジャルドが居る。赤女と、カンコの件もある。
考えろ。
どうするのがベストだ。どの選択が一番、被害が少ない。
考えろ。
俺の選択で、何から何まで変わるかもしれない。
どうする。
敵の軍団と、ゴールデンアームス。どっちから話を聞くか。どっちの方が話が通じるのか。
そもそも、戦っている相手は誰だ。戦況は。情報が少なすぎる。これじゃあ、駄目だ。
何をやっているんだ、俺は。こんなんじゃ駄目だって、知っていたはずなのに。
何時から俺はこんなに考えなくなったんだ。
俺は、二つ名を持つハンターだ。世界的に有名で、強くて。そんなハンターだろ。
赤い嘘吐き。
クオに貰ったこの名前を汚すわけにはいかないだろ。だから頑張らないといけないじゃ無いか。俺が頑張らないと、クオが損をする。クオの願いが叶えられなくなる。
クオの願いを知っているわけじゃ無いのに。
そうやって自分は誰かのために頑張っているって思いこまないと、壊れてしまいそうだ。
それだけ弱い俺を。そんなゴミみたいな俺を、クオは拾ってくれたから。
「赤髪っ!」
このなにもない草原に、きっぱりとした声が轟いた。
赤い髪の人間は、この辺りには俺しかいない。俺は咄嗟に声がした方を振り向こうとして、止めた。
横に身を投げる。腰の猟銃を抜く。
俺と同じように声に反応していたジャルドも、同じように刀を抜いていた。
俺とジャルドは、左右に分かれていたようだ。
その間、ちょうど俺が居たあたりに一人の人間が飛び込んできた。
土煙が上がる。
だが、見える。あの髪には見覚えがある。
銀色に光る、髪。右の髪の束の赤いメッシュ。
あれは。
「カーネイジ・マーマンッ!」
そうだ。
俺が追っている集団、カーネイジ・マーマンの一人、達羅銀孤。
土に拳を叩きこんだらしい。それだけで、地面に大きなくぼみが出来ている。
だが、その行動は達羅の体にも負担をかけたらしく、右手の甲がぱっくりと割れて血がだらだらと流れていた。
コイツは、痛みを感じにくい。だからこそ、無茶な行動をする。
こっちが驚くような事。普通の人間なら躊躇ってしまう事。それをやってみせる。
例えば、今のような行動。
達羅は痺れているであろう右腕を素早く引いて、俺たちと距離を取る。
と、思った。
一度引いて、体勢を立て直すと思った。
やっぱり。コイツの動きは読めない。引かなかった。コイツは決して、引かなかった。
右腕は動かしづらいのか、左腕で拳を作って俺の方に詰め寄ってくる。
〜つづく〜
五十九話目です。
合計で百九十ですかね、これで。