複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.227 )
日時: 2012/11/22 18:08
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



60・冷酷のようなムーヴィ。


急いで、銃を構える。なんてことはしない。この距離じゃ、駄目だ。銃で殴ろう。
そう思ったのに、達羅の体がぐらりと揺れて、地面に倒れこんだ。突然のことに驚くが、駆け寄ったりなんかはしない。
それは俺に仕事じゃないからだ。
達羅の体に急いで駆け寄ったのは、半分で髪の色が変わっているムーヴィという男だ。
しっかりとした体をしているそれなりの良い男だが、髪と目の色のせいでそれが台無しになっている。
達羅の細い体を抱き上げて、俺を睨みつけた。
ムーヴィの腕の中の達羅の意識はもう、無いようだ。目を閉じている。でも、息は荒い。どこか調子が悪いのかもしれない。
俺はもちろん、ジャルドも気を抜いてはいない。

「レッドライアー。久しぶりだな。こんなところまで追ってくるのかよ」

ムーヴィは、俺の顔を見ながら嫌そうな顔をしている。

仕方がないじゃないか。それはクオに頼まれたことなんだから。お前らが生きていちゃ、駄目なんだよ。俺が深く考える必要はない。
だから、殺す。
クオに頼まれたから。だから。それ以上の理由は無い。それ以下の意味もない。俺の行動する理由なんて、それだけで十分だ。
そうやってクオに頼まれた仕事をしていっていたら、いつの間にか金持ちになっていた。いろんな人のためになるらしい。
それで、俺はいつの間にか有名人になっていて。本当は俺の力じゃない。クオのおかげだ。
クオは、だけど俺に仕事を強要したりはしない。
これは俺の意志でしていること。不満じゃない。
たまに、なんで俺じゃないといけないのかって考えることがあった。そんな時は、考えるのをやめる。

だって、深く考えたら、本当は俺なんかに価値は無いってことに、気が付いてしまうから。

「こんなところに居たのか、カーネイジ・マーマン。パルとアシュリーはどこだ」

カーネイジ・マーマンのメンバーであるパルとアシュリーが居ない。いつも一緒に行動しているものだと思ったけど。
死んだのかな。それとも、仲間割れか。俺にとってはどっちでも良いことだ。できれば、まとまっていて欲しかった。その方が楽だから。

ジャルドは、めんどくさそうにしている。
早くカンコに会いたいのだろう。残念だけど、ここでカーネイジ・マーマンを見つけるのは予想外だった。できればここで解決したい。二人もいるし、しかも一人は戦闘不能。これだけ良いチャンスは滅多にない。

ムーヴィは達羅を捨てて逃げることは出来ない。
前に襲った時、そうしなかった。
ムーヴィは、カーネイジ・マーマンが大切なんだ。
唯一の自分の自分の居場所だから。
守らないと、自分の居場所がなくなるから。

「……誰が教えるか」


〜つづく〜


六十話目です。
長い。