複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.230 )
- 日時: 2012/11/23 14:54
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
63・正義のような暴走。
案内されたのは、小さなテントだった。大きなテントには入れたくないらしい。
俺とジャルドは簡単な長椅子に案内された。素直に座る。
奥のベッドに、ムーヴィが達羅を寝かせた。レドモンは立ったままだ。
「相手のギャングは、麻薬を密輸している」
麻薬。ダルトファルトに密輸か。アームスも派手なことをしているな。全く知らなかった。
レドモンは俺とジャルドの反応を覗いながら、話を続ける。
「騎士団にな。ダルトファルトの騎士団にだ。それは許せないことだ。薬を使って、人を殺すことを快感だと教える。それは良くない。私はそれが許せない。薬を使ったって、剣の重さは、銃の冷たさは変わらない」
レドモンは、そういうと口を閉ざした。ジャルドの手に力が入ったのが分かった。
こういうの、ジャルドは好きだもんな。
自分の意志でしっかりと動いている人間。ジャルドもそう言う人間だからな。
レドモンの言いたいことは良く分かる。
最近では、街を守るべき立場の人間が、麻薬を使って街の治安を乱していることが多い。
それを、正したいのか。
それについては俺も疑問を持っていた。人を殺す事は罪だ。それを、紛らわそうなんて。それは逃げているにすぎない。
殺す相手に、誠意を持っているんだ。この女は。
嫌いじゃない。何時だって、誰のものだって命は重い。
「……で? ここに何しに来たんだ? 赤い嘘吐き」
だけど、コイツの考えが正しかろうが俺には関係ないことだ。俺の目的はただ一つしかない。
俺はクオの期待を裏切るわけにはいかない。
薬を密輸して居るアームスをかばう気には到底慣れない。そしてレドモンも。
もともとはきっと、すごい騎士だったのだろう。しかし、コイツはどこかが壊れているようにしか思えない。
何かあったんだ。コイツの心を踏みにじるような何かが。
コイツはそれで、変わってしまったのだろう。
深くは追及しないけど。あまり興味は無い。ジャルドは興味が湧いているようだけど、レドモンの人間性を深く知る必要は、全くない。
あまり感情移入すると後が面倒だから。
俺はただ淡々と仕事をすれば良い。ヒダリのように。
アイツは今、どうしているかな。ロムとヒダリ。赤女を殺した二人。
アイツ等は助かったかな。普通の人間なら助からないけど、アイツ等は生憎普通じゃない。
レドモンの青い瞳に見つめられながら、俺は立ち上がる。
早い方が良い。アームスとは仲が良い方じゃないから、こっちで問題を解決しよう。
頭まで筋肉のアイツには、話が通じなさそうだし。喧嘩になりそうだ。アームスとの喧嘩は今すべきことじゃない。
それはちゃんと分かっている。
「アンタたちの抗争を、止めに来た」
〜つづく〜
六十三話目です。
あと六話。