複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.231 )
- 日時: 2012/11/23 15:24
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
64・対等のような対照。
「麻薬を密輸、ですか」
「そうだ。それを突然止めろと言われた。だから殺す」
アームスの話を聞いたところによると、仕事を辞めろと言われたアームスの軍団が起こって襲撃に来たらしい。
相手はダルトファルト騎士団の三番対。なんでも、麻薬の密輸を止めると最初に言い出したのは、その三番隊の隊長らしい。
燕はそれを思い出したのか、イライラしている。確かにイライラするのも無理はない。
だけど、そもそも麻薬を扱うこと自体が良くないことなんじゃないのかな。
だけど、それがないと人を殺すのに抵抗を持ってしまうらしく、もはや戦士にはもう必要不可欠になっているのだそうだ。
よく分からない。なら、戦争をするのは止めれば良いのに。誰も争わなければ良いのに。
意味が分からない。改善すべきところを間違えているとしか、思えない。
反論したいこととか、言いたいことはたくさんあるけど、今はそんなことをしている場合じゃない。
私たちには、目的がある。この人たちの抗争を止めて、ライアーと会うこと。カンコをジャルドの下に無事に送ること。
「こんなことしていても時間の無駄です。早く動きましょう」
速く動きたい。時間がないわけじゃ無いけど、いつまでもこうやって居るほど私は気が長いわけでも無い。
私は軍と軍の戦いを経験した訳じゃない。知識もない。でもアームスと燕にはあるはずだ。
なら、簡単。
私は急かすだけで良い。間違った選択をしているときに、止めれば良い。それだけで。楽な仕事だ。
ただ、人の感情をよく読みとっていかないとだめだ。
できるか。できる出来ないじゃない。やるしかない。やる以外に選択肢はない。道は無い。
だから私はやらなくちゃいけない。
私の言葉に、燕が目を輝かせた。
燕もずっと変わらない戦況に、飽き飽きしていたんだろう。でも、親方だから口を出すことができない。
そこで他人である私が言えば良い訳だ。
適度に距離がある人間が行った方がいいことも、時にはあるんだ。
アームスは悩んだ後、太ももを両手でたたきながら立ち上がった。
「ならば、明日の早朝、奇襲を仕掛ける」
「……何も考えないのね」
突然の決断に、カンコが冷たい声を出す。
余計なことを。これで決意が揺らいだらどうしてくれる。
だが、親方は首の骨を鳴らして、にやりと笑う。
初めて見た親方の笑顔は、なんだか無邪気で子供みたいだった。見ると、燕も嬉しそうに笑っている。
「勢いってのも大切なんだよ」
勢い。本当かよ。
ライアーは少なくとも、そんなもので行動はしない。ライアーとは全く別の種類の人間だ。
嫌いじゃないな。そういうの。
ちょっと楽しみになってきた。
怖い方が全然大きいけど。
〜つづく〜
六十四話目です。
あと五話。