複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.232 )
- 日時: 2012/11/24 10:44
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
65・仲間のような関係。
人と争う。大勢の人と、人が。
私にとっては、全員他人だけど。この人たちにとってはそうじゃない。みんなが一緒に過ごして来た仲間で、親友で。大切な人たちなんだ。
それが、明日死ぬかもしれない。だれが死ぬか分からない。
私も、ドキドキしている。私が守らなくちゃいけないのは、カンコ一人。
だけど、親方はみんなを守りたいんだ。誰一人として、本当は死んで欲しくない。
それは叶わないと思うんだけどな。だって、相手も同じことを思って居るはずだから。相手だって、死にたくないし、死んで欲しくない。
みんな同じ考えなのに、なんで戦わなくちゃいけないのだろう。
それはきっと、人の感情が加わっているから。自分が決めたルールとか、プライドとか。それが関わっているから、ややこしくなる。戦わなくちゃいけなくなる。死なないといけない人間が出てくる。
そんなのはおかしい。おかしいはずだけど。
私だって、人を殺した。たくさん。
ハラダ・ファン・ゴでアスラから私を守った、いや、アスラが人を殺すことを食い留めたあのおじさん。
あの人だって、私が殺したんだ。
私は。私はたくさんの人を。
だって仕方がなかったんだ。あのときは。本当に、みんなに死んでほしかった。私のために、みんなに死んでほしかった。
だから、仕方がないことで。
みんなが悪い。私は悪くない。私は悪い。悪くない。悪い。悪くない。悪い。悪くない悪い悪くない悪い悪くない悪い悪くない悪い。
「雪羽、緊張している?」
隣で眠っていたはずのカンコが、コッチを向いた。
私は荒くなりかけていた息を整えながら、カンコの方を向く。
もう何時だろう。明日の朝は早いのに、全く眠ることができない。
最悪だ。
「なんで?」
「息が荒かったから。眠れないのかなって」
そう。私は緊張している。初めての事をするから。
手の甲で前髪を書き上げる。
確かに、汗もかいているし。
ところで私はさっきまで何を考えていたんだろう。思い出せない。まあいいか。そんなに大したことじゃないだろう。
不気味なくらい落ち着いているカンコ。大人だな。
ジャルドと一緒に居たんじゃ、こういう経験は初めてじゃないのかな。
この年で、そんなことを何度も経験しているのか。
生と死の狭間。
その息苦しさは、吐き気がするくらい大きい。
大きく息を吸い込んで、吐く。
少しは落ち着けたみたいだ。しっかりしないと。
私は頑張らないといけないのだから。
「うん。緊張はしてるよ」
でも、それだけじゃない。わくわくして居るのかもしれない。
何もない毎日。その繰り返しの日々から、離れている。
たった一人で繰り返してきた平凡の日常。私は平凡な人間で、普通の人間のはずだった。死ぬまでそうかと思ってた。
でも、違った。
ライアーと出会って。みんなと出会って。いろんなことがあって。
私の毎日は、怖いくらいに充実している。
だから、もう眠ろう。
私は、大丈夫だ。
〜つづく〜
六十五話目です。
あと四話。