複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.233 )
- 日時: 2012/11/24 11:09
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
66・運命のような選択。
冬の日の出は遅い。
私たちが燕にたたき起こされたのは、まだ深夜なんじゃないかと思うくらい辺りが真っ暗なときだった。
夜は明けていない。いや、明けているのか。ただ、太陽が出ていない。
白い息を吐く。
燕にポンチョを貸して貰って着ているけど、あとはジャージしか着ていないし。カンコはワンピースの上から私と同じものを着ている。
だけど、寒い。
私は奥歯をがちがちと鳴らしながら、親方の指示を聞く。
何やら大声で、みんなに呼びかけている。みんなはその言葉に熱心に耳を傾けて、時々声を上げて返事をしたり、武器で地面を叩いたり、武器を空に突き上げたりしていた。
私はどうにも乗る気にはなれない。
だけど、こういう雰囲気は好きだ。みんなで頑張るぞっていう、この感じ。
私の隣のカンコは、その様子をじっと見つめている。
私は自分の手で体を摩ったりしているのに、カンコはしっかりと構えていた。
「……寒くない?」
一応聞いてみたけど、カンコは私を少しだけ見上げて、またみんなの方に視線を映す。
一番後ろで、少し距離を開けているから、私たちの会話は聞こえないだろう。
私たちとみんなの間に、壁があるみたいだ。
燕の挨拶に移る。親方と同じような感じのことを言っている。
でも、どこか違う。
燕が言っていると、少しだけ心に余裕ができる。親方で空気を絞めて、燕で余裕を持たせる。
すごい空気だ。
「寒いよ。だけど、きっとそのうち熱くなる。戦いはそういうもの」
良く分からない。
カンコはそうはっきりと言った。
戦いは、熱いもの。そうかな。私にとっては、戦いなんてひどく冷たくてくだらないものだと思うけど。
燕の声に耳を傾けてみる。
私もその気にしてほしい。私の武器はたった四本のハラダ・ファン・ゴのレプリカ。
そして、それを華麗に扱えるわけでも無い。魔術も使えないし、軍の指揮ができるわけでもない。
しかし、本気にしてほしい。私もこの軍のメンバーとしての自覚を植え付けてほしい。
「麻薬はもう要らねぇだァ!? ふざけんな! おれたちの仕事なんだ! あいつらが断っていい問題じゃねェ! 何が騎士団だ! アイツ等も同じ人間だ! けど容赦はしねェ! あいつらのくそチ×コ、引きちぎってやる!」
酷い言葉が聞こえてきたな。
燕の怒りの声に、みんなの士気が上がって行くのが分かる。
私も、頑張ろう。できることをしよう。
私は、カンコを守るという大事な使命がある。
そのためなら、この人たちはどうなっても良い。と思ってたけど。だけど、一応は生き残ってほしいな。
抗争をどうやって治めるか。その方法は良く知らないから、さっさと解決に導いてやる。
それが正しいかどうかなんて、知らない。
ただ今は、これが正しいと思うから。
〜つづく〜
六十六話目です。
あと三話。