複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.235 )
- 日時: 2012/11/24 14:18
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
68・激突のような突撃。
燕に突然言われて、私たち女三人衆はなるべく後ろの方につくことになった。
少しだけ、アシュリーは満足してなさそうな顔をしていたけど。だけど、力になれないのは分かって居るって言って、諦めていた。
すごい、強い人。このアシュリーっていう人は、すごい強い人だと思う。なんでか、そう思う。
私は、みんなに死なないで欲しいって思うだけなのに、そうならないように自分で動こうとするんだから。その時点でもう、アシュリーと私の違いは見えていた。
軍が、移動を始める。動く。
始まるんだ。
先頭で、四本足のビーストに乗った親方が、走り始める。それにぴったりとついて行っているのは、走っている燕だ。
燕は、何にも乗っていない。走って、ビーストについて行っている。
速い。
「私たちも行こう」
真っ先に動いたのは、アシュリーだった。
不満そうにしたカンコも、仕方ないという感じでアシュリーについていく。
私はそんな二人に少しだけ遅れた。
もう動くのかな。早くないかな。もう少し、ゆっくりしたかった。
でもそれは叶わない。
私たちに止まっている暇はない。
そろそろ、日が上り始める。
+ + + +
「敵襲です!」
若い兵士がそんなことを叫んでいるのが聞こえたのは、まだ日が昇り始めて少ししか経っていない時だった。
俺とジャルドは、昨晩一睡もしなかった。達羅とムーヴィに何をされるか分からない。そして、達羅とムーヴィに手を出すこともしなかった。そうすると、今度はレドモンに何をされるか分からない。
俺たちは、急いで用意されていたテントを出た。
丁寧に、空いていたテントを貸してくれたのだ。
レドモンは、俺たちの話を聞いて、楽しそうに笑った。
やって見せろと。私たちを、止めて見せろと。
止めて見せる。
ジャルドには、納得して貰った。
赤女とカンコのこと、何か掴めるかもしれないから。
でも、本当は。こんなことは考えたくないけど。ジャルドも諦めているのかもしれない。
もう、赤女とカンコは生きていないって。そう思っているのかもしれない。
ジャルドがそう簡単にカンコを諦めるとは思えない。しかし、じゃあなんで俺の我儘を聞いてくれるんだ。
近くの丘に立って、敵が迫って来ているのを見ているのはレドモンだ。綺麗ではない金髪を風になびかせて、楽しそうに笑っている。
達羅とムーヴィも騎士団の連中の中に紛れていた。
達羅が俺を振り返る。赤と青が入り混じった瞳。しばらくして、舌を出された。
後で絶対殺しにかかってくるな。
レドモンが腰の刀を抜く。
それを、空を切るように振った。
「絶対に負けるな!自分の正義は自分で決めろ!」
〜つづく〜
六十八話目です。
次で。