複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。【200話到達しました…】 ( No.238 )
日時: 2012/11/25 15:00
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/



70・切り札のような手段。


「いったん退くぞ!」

ジャルドが居るであろう方に声を掛けて、人込みから抜ける。
アームスに声が届かない。どうにかして、アームスの気を引かないといけない。
どうやってやる。何か方法は無いか。

そう思った時だ。
レドモンが、地面に何か書き始めた。土を鎧のブーツで抉り、円を描く。
その中に何か粉をまく。
分からない。何をする気だ。

「レド……?」

「まぁ、見ていなよ。私の正義の形だ」


 + + + +


ついに、始まった。燕が一気に駆け抜けて、すぐに見えなくなった。
なんだ。何が起こっているんだ。すごい熱気だ。確かに熱い。
私と違って、カンコはきょろきょろと視線をめぐらせ、周りの状況を確認している。アシュリーもだ。
そのアシュリーが、ある一点を見て、何かを見つけたみたいだ。
それに向かって、駆け出した。

「アシュリーさんっ!」

急いで止めにかかる。
カンコはそれを呆れたように見ている。アシュリーは私の手を振りほどこうとしている。
明らかに様子が変だ。
アシュリーが向いている方を見ると、銀髪の少年と燕が戦っていた。

「アシュリーさん、大丈夫です! 燕は平気ですから!」

「違う! そうじゃない! 燕はどうでも良い! 銀っ銀っ!!」

アシュリーがついに、私の腕から抜けて駆け出す。
銀。あの銀髪の少年の名前だろうか。
周りの人間たちとは全く違った戦いを見せる二人。その空間にアシュリーが入っていく。そして、銀髪の少年に抱き着いた。
驚いている銀髪と、燕。
良かった。なんか知らないけど、アシュリーがしたかったことが叶ったみたいだ。
よく分からない。
それより。それよりだ。
この戦い。どうにかならないかな。
親方はどんどん敵を倒して行って、丘の上に立っている人に向かって何かを叫んでいる。
丘の上の人は、金髪を風になびかせていた。
あの人が、敵の大将。あれを倒せば。あの人と親方が何とかなれば、この戦いは終わる。
私がどうにかしないと。私が頑張らないと。燕とアシュリーと親方ばかりに頼ってはいられない。

「っっ」

しまった。横に敵の一人が来ていたんだ。
私は急いでナイフを抜く。数歩飛びのいたけど、人がごちゃごちゃして居て、動きづらい。
私が襲われる事だってあるんだった。忘れていた。油断していた。最悪。
左の二の腕が少し切られた。構ってはいられない。
ちゃんとカンコを庇いながら、ナイフを構える。しっかりやらないと。私だって戦わないといけない。人を相手にするのは初めてだけど、やるしかない。
私は息を吐いた。
頑張れ。もしかしたら誰かが助けてくれるかもとか。そういうのは考えちゃいけないんだ。
自分しか頼れない。
心を決めた時だ。

カンコが私の腰辺りを掴んだ。
それに驚くけど。
それよりも先に、突如として現れたそれに、私も、敵も味方も目を奪われた。

「なんだ、あれ……」


〜つづく〜


七十話目です。
最近疲れています。