複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。【200話到達しました…】 ( No.240 )
- 日時: 2012/12/01 17:37
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
72・ピンチのようなパニック。
白い壁。一言だった。初めて見る物だった。二つの赤い目が、ぎろりと私たちを見下ろした。
なんだ、あれ。なんだこれ。みんなも、ぽかんとしている。何が起こっているのかわかっていないみたいだ。
そりゃあそうだろうな。
私だって訳が分からない。
カンコが、私のジャージを引っ張る。
動けない。動かない。何が起こっているんだ。
頭の中がパニックすぎて、分からない。
なんだ、これは。なんなんだ。
「雪羽! rinだ! 逃げないと!!」
辺りを見渡してみる。親方も同じような事を言っている。
けど、私は逃げる事なんかできない。
私は。
動けない。怖いんだよ。
なんだよ、rinって。なんなんだよ。
だれか説明してくれ。敵もわかってないじゃないか。
ビースト?ビーストのギガント?
有り得ない。ギガントでもあんなに大きくはならない。
絶対にならない。
「退け! アンダープラネッターだ!」
親方の大きな声。耳でちゃんと聞き取れる。
それでも、動けない。怖いんだ。
カンコが一生懸命引っ張ってくれる。
動かないと。みんながパニックに陥った。
私の側に居た敵も、自分のテントの方に走っていく。人が雪崩のように大移動をはじめ、その中で止まって居るのは、私と、燕だけだ。
燕が。
燕が動いていない。でも、だからなんだ。だからなんなんだ。
私とカンコが助かれば。
だけど。だけど。
私を助けてくれた、燕。
それが動かない。私が燕に駆け寄ろうとした。
みんなが居なくなって、燕の周りには誰もいない。
硬直した燕は、rinを見上げていた。
私は、カンコの肩に手を離して、じっと目を見つめた。
「先に、逃げていて。お願い」
カンコは、何かを言おうとしたみたいだ。
だけど、それを聞く前に私は駆け出した。
燕。燕。燕を助けないと。
勝てる訳がない。大きすぎる。あんなに大きな敵を相手に、何か行動を起こそうと思っているなら、止めないと。
止めないと。燕。
大声を上げようとした。
その、私の隣を、大きな影が通り過ぎた。
その影は、一直線に燕に向かって行く。
親方だ。
親方が、燕に駆けていく。
その背中を見ながら、私は足を止めた。
rinが、傾く。白い壁のようなrinが、傾き始めたのだ。
逃げ遅れた人たちの声が、大きくなる。
倒れる、のか?
もしかして。そうしたら、大勢の人が下敷きになる。
もちろん、一番rinに近い位置に居る燕と、親方も。
どうしたらいい。私の足はまた、動かなくなってしまった。
倒れる?
いやだ。止めてくれ。白いいぼのようなものに、下敷きになるなんて。いやだ。ダメだ。
どっちが早い。
親方が、燕を助けて、白い壁が倒れてくる範囲から外れるのと、rinが倒れるの。どっちが早いんだ。
「親方……っ!」
燕を助けてくれ。
〜つづく〜
七十二話目です。