複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.242 )
- 日時: 2012/12/02 17:23
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
74・気休めのような呼びかけ。
一瞬の出来事で、何が起こったのか全く分からなかった。
ただ、燕の叫び声が聞こえた。
最悪。最悪の結果になったんだ。私は急いで燕が居るであろう方向に駆けていく。
砂埃で前が見えない。だけど、行くしか無い。
恐怖を感じた。燕の聞いた事の無い声に、恐怖を感じたのだ。
人間の声とはとても思えない。
だから、駆ける。急ぐ。
まにあってくれ。
何人だ。何人、死んだ。分からない。戦況は変わらない。どっちの味方も殺しただろう。
rinは今横倒しになったことで、口が横になっている。
砂埃が収まってくる。視界が広がって来た。
その中で、蹲って地面を叩いている燕を見つけた。何かを叫んでいる。
どうすれば良い。
燕をこのままにしては居られない。私が、何とかしないといけない。
私が一番燕の近くにいる。
私は燕に駆け寄った。そして、後ろから抱きしめた。ギュッと。
拳を両手で包むと、ようやく地面を叩くのをやめた。
血だらけの拳。きっと骨が折れている。
「燕、さん」
「雪、羽……親方、親方が……」
両目から狂ったように涙を流して、rinの下を指さす。
やっぱり。やっぱりそうなってしまったんだ。
苦しい。胸が苦しい。きっとクイーンノーベルでも治すことはできないだろう。
死体が、ぐちゃぐちゃだろうから。
私は腕に力を込める。
私なんかで。私なんかで、親方の埋め合わせができるとは思えない。
だけど、これ以上こんな燕を見ては居られなかった。
私は、私にできることをしたい。だからやる。
だから、何の効果は無いとしても、抱きしめてあげる。
こんなことをしていてはいけない。こっちのリーダーがやられたんだ。こっちの士気が下がってしまう。
そして。その士気を上げられるのは、もう燕しかいない。
燕が。燕が要なんだ。もう、関係ない。抗争を止めさせるなんてものは、もう考えない。
勝たないと。親方の仇を、討たないと。
じゃないと、燕が立ち直れない。
だから、やるしかない。
「……勝ちましょう」
唇を噛み締める。
居てもたっても居られなかった。なんでこんなことになったんだ。
燕が、目を瞑る。静かに呼吸をする。
その様子を、私は後ろから見守った。
燕は、強い。強すぎる。強すぎて、壊れてしまう。だから、守っていたんだ。親方が、守っていた。
燕は、強い。親方が居なくても、強くならないといけない。
「……雪羽、ありがとう」
燕が、立ち上がった。
私の腕を振りほどきながら。私も立ち上がる。
大丈夫。燕なら、大丈夫だ。
そう思った時。
それは、始まった。
「rrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr」
咆哮。
大地を揺るがすような、這うような。
そんな獣の叫び。
それは、rinが発するものだった。
〜つづく〜
七十四話目です。
rinが打つのめんどくさいw