複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.243 )
- 日時: 2012/12/02 19:43
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
75・呼び鈴のようなrin。
大声だ。
rinが仲間を呼ぶときに放つ、鳴き声。この声を聞いて、ビーストがやってくる。
アンダープラネッターとビーストの関係は、詳しくは明かされて居ない。だけど、この声を聞いて、ビーストがやってくる。
俺はライアーを追った。
ライアーは人ごみの中に飛び込んで、みんなを落ち着かせようとして居る。だけどそれは届かない。当たり前だ。誰も見たことのない化け物が、大地にいきなり現れたのだから。
俺だって驚いている。召喚魔術を、こんなところで使うなんて。味方も死ぬのをわかっていて、レドモンは発動させたんだ。
rinが傾いて、人が何人か下敷きになった。
その中に、アームスもいた。アームスの方を向いて、ライアーが切なそうな、悔しそうな顔をしている。
だけど、くじけていない。アイツはそういうところで踏ん張るやつだから。
腰の刀を抜いて、混乱に乗じて人を斬る。
「ジャルドっ!!」
声を聞いた。人ごみの中で、確かに。
この済んだ湖のような声は。知っている。知っているぞ。
俺は顔を上げて、人を切りながら辺りを見渡す。まさか。幻聴じゃないことを信じたい。
「カンコっ!?」
確かに、カンコの声だった。
確かに俺は聞いた。俺は確かに、カンコの声を聴いた。だから、小さなその姿を探そうと思って、目を凝らす。
すると、人込みの中から、また俺を呼ぶ声が聞こえたのだ。
「ジャルド!!」
「カンコ! 待ってろ!」
小さなその姿を見つけて、思わず剣を投げ出しそうになった。
いや、した。投げ出して、その体を抱きしめる。苦しそうにしながらも、俺の肩に顔を埋める。
なんで、生きていたんだ。すごい。良かった。
絶対に、あり得ないと思っていたのに。生きていてくれた。
感動で、涙が溢れそうになる。
ぐっと堪えて、カンコを抱き上げる。
片腕でカンコを抱えて、剣を拾う。
まだ戦いは終わっていない。
「心配かけて、ごめんね」
「いんや、大丈夫だね」
いつもより甘えん坊になったカンコが、俺の首に腕を巻いてきた。
のんびりとなった心を引き締めたのは、地響きだった。大地を揺らしている。
なんだ。何が起こっている。
カンコが体をひねって、東の大地を指さした。
「rinに呼ばれたビーストだ!!」
まさか。早い。早すぎる。大量のビーストが。いろんな種類のビーストが、押し寄せて来る。大地を揺らしながら。
思わず腰が引ける。
大きい物から、小さい物まで。こっちに来る。
くそ。なんて事をしてくれたんだ、rin。
ふざけるな。見ると、丘の上でレドモンが高笑いをしている。
くそ。
こんなことをしたら、敵も味方もみんな死んじまうじゃねぇか。
〜つづく〜
七十五話目です。