複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.245 )
- 日時: 2012/12/04 16:39
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
77・特攻のような無茶。
体の奥底から震えが襲ってくるようだった。吐きだしたくても吐きだせないその震えを止めたのは、雪羽だった。
赤いジャージの首下で、白いネックレスを揺らしながら、必死におれに呼びかけてくれた。
自分の掌を汚しながらも、必死に。
おれなら。そう。
おれはこうしてはいられない。rinが呼んでいるような気がする。
自分の中に流れる血が、rinの声に疼く。
だけど、おれはおれだから。rinの物じゃない。
汚い血しか入っていないわけじゃない。母さんの血だって入っている。
だから、負けてはいけないんだ。自分は負けちゃあいけない。おれは、負けない。
親方が死んだ今、おれがこんなんでどうする。おれしかいないんだから。
おれしか、みんなをまとめられない。
雪羽にお礼を言って、立ち上がる。
そして、向ってくるビーストの大群に向かって、駆け出した。
速く。速く。どんどん加速させる。
靴を捨てるように脱ぐ。こっちの方が走りやすい。
血が、燃えるように熱い。
だからか、いつもより早く走れている。
ビーストの大群に対して勝算は無い。けど、やるしかない。
rinはその場を動けないから、無視しても良い。
次にまた大軍を呼ばれたら困るけど、次呼ぶ時まで、アッチの魔術師の体力はきっと。
「ahahahahahahaaaaaaa」
ほら。持たなかった。
ずっと地上二アンダープラネッターを存在させるのは、魔術師の力量が絡んでくる。その程度の魔術師だ。
リンの下の魔方陣が光り、その中にrinが吸い込まれて行く。
やがて、何もなかったかのように居なくなってしまった。
よし。
これで良い。これで、このビーストたちを倒せばいい。
みんななら、付いて来てくれる。俺についてきてくれる。
おれは先頭の四足歩行で、目が六つ並んだ、つるつるの灰色の肌を持つドワーフに、突っ込んだ。
吹き飛ばされたドワーフの穴を埋めるように、次から次へとビーストがやってくる。
止まらない。勢いが収まらない。
やけくそになりながらも、向ってくるビーストを倒していく。
そんなおれの隣に、黒い風が吹いた。
隣を見ると、鮮やかな手さばきでビーストを一刀両断する、黒いコートの赤髪が目に入った。
見覚えはない。敵だ。そんなことは言っていられない。今はコイツ等を止めることが先決だ。
人間は引き際をわかっている。
だけどコイツ等は、知らない。
「uwaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa」
自分の発している声が、人間とは思えないくらいに歪だ。
自分の爪が、獣のように長い。視界の端で揺れる髪の色が、虹色に変化していく。
俺の姿は今、とても人間とは思えないだろう。
けど。
けど俺は引かない。
守らなくちゃいけないものがある。
親方の残してくれたものがある。
〜つづく〜
七十七話目です。
燕は強い子ですね。