複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.246 )
日時: 2012/12/05 17:09
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/



78・ゴミのような私。


rinを出したことによって、戦争がもっと楽しいものになった。後は雑魚だけだ。頭をなくした蜘蛛。
rinがアッチの頭を殺してくれたのは、嬉しい誤算だった。それもこれも、あの少年のおかげ。
あの少年は、おそらく人間じゃない。正しくは、人間だけじゃない。そんなことは、見ていればわかる。普通にわかる。
rinの声に、反応したのだから。

私は丘の上で、まるで神になった気分で腹を抱えて笑ってやる。
私が一つの行動を起こすだけで、たくさんの人が死んだ。死んだ。私は今、この場所の神になっている。
なんて心地良いんだろうか。
私の正義は守られて居る。正義とはなんなのか。そんな事を考えるのはバカだ。
私の正義は、もう随分前に捻じ曲げられている。あの日、二人の男にゴミのように犯されてから。私は変わってしまった。その時に代わってしまった。
この状況は、以前私が望んだものとは全く違っている。それでもやるしかない。私が信じられるものは私しかない。私は、私を信じるしか無い。私が信じた正義しか信じる事はできない。
だから、迷わない。

私は腰の剣を抜く。
さてと。自分が起こした混乱に飛び込んでいこう。
丘を飛び下りて、両足で着地する。
オーダーメイドで作らせた鎧は、普通の物より圧倒的に軽い。だがその代わりに防御力が低い。私はそんなものは必要としていないから良い。
私はぐるりとまわりを見渡しつつ、こっちに迫ってきたビーストの頭を剣の柄でたたき割る。
ピンクと黄色の脂肪と血が混ざったものが飛び散って、酷い匂いを発した。その匂いに鼻を鳴らして、飛沫した物を舌で舐め取る。
くさった肉の味がした。

私は一直線に、少年の下を目指していく。少年は目を金色に輝かせながら、半ば噛み付くようにビーストを壊していく。
赤髪はその姿にぎょっとしながら、殺戮を繰り返していく。
片手に持っている剣は、私たち騎士団に渡されている物だから、誰かから拝借したのだろう。
それにしても、あべこべ男と銀髪が居ない。いつの間にか、逃げていたのだろうか。今はそんなことはどうでもいい。
近くに倒れこんでいるギャングの男の死体を踏みつけて、その死体に群がっていた小物を一掃する。
色鮮やかなビーストの血は、いつみても美しい。

私が迫っていることに気付いたのか、少年が距離を取る。
そうはさせるか。そう思って、背に隠していた銃に手を伸ばした、その時だ。

私と少年の間に居たビーストが、一気に吹き飛んだ。

何が起こったのかわからず、両手が自然に剣の柄に戻る。少年も呆気に取られたかのように、額辺りについたビーストの目玉を握った。

一気に静まり返った戦場に、落ち着いた男の声が通る。

「お楽しみのところ悪いけど、ちょっと失礼。こっちにも事情があるんでね」

そう言った男は、マリンブルーの瞳を細めて笑った。


〜つづく〜


七十八話目です。
参照2000ありがとうございました……!!
感激でございます……!
私はまだ生きております!