複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.247 )
日時: 2012/12/29 21:23
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/


79・本能のような約束。


マリンブルーの瞳。
その瞳がおれを映した時、背筋が凍ったような気がした。
行動が止まった。おれに迫って来ていた金髪も動きを止めてしまった。
みんなは、マリンブルーに気を取られないで、周りのビーストを倒している。
おれに続いてきてくれたんだ。よかった。
おれの近くで戦っていた赤髪も、マリンブルーを警戒している。
マリンブルーは、辺りを見渡して、そして何かを見つけたのか、にやりと笑って唇を舐めた。

マリンブルーが高く跳躍する。
おれの方が高く飛べるけど、マリンブルーは普通の人間だろうからそうなると凄い。
マリンブルーは綺麗に着地を決めると、目の前に居た女に抱き着いた。

おれはとっさに走り出した。
何だかおかしい。敵の味方じゃない。敵も呆気に取られているから。
鎧の金髪さえも、きょとんとしているからだ。
おれの体は勝手に動いていた。
いやな感じがしたのだ。それでも、ビーストやらそれに応戦する人間で、うまく先に進めない。

マリンブルーと女の様子も見えなくなってしまった。


 + + + +


いっきに、ビーストの大群の一部が一気に片づけられた。
何が起こったのか確認をしようとした時、私の目の前に深い青っぽい黒髪をした、マリンブルーの瞳を持つ男が現れた。
綺麗に着地をして、肩まである長い髪を結う。
そして、肩のあたりに手を伸ばして小刀を抜いたのだ。そして、私がその小刀に反応する前に、抱きしめた。
首筋に、小刀の刃が当たる。
脳みその活動が停止する。
なんで、私がこんな目に合っているのかわからない。なんで、私が。

耳元に唇を近づけて低い声を出される。
凍りついた頭に、熱が吹き込まれた。

「大人しくしてくれる? アンタを雷暝様が呼んでるんだ」

「雷暝さんが、私を……?」

グッと、体が浮く。
雷暝。あのクイーン・ノーベルの城であった、なんだか嫌な感じがする男のことだ。
それを考えることも、と問う隙も与えなかった。

マリンブルーの肩につかまると、どんどんみんなが離れていく。
なんでだ。なんで私が。私が遠ざかっていく事にだれも気付かない。気付いてくれ、誰か。カンコ。燕。誰でもいい。
私が居ないことに、なんで誰も気づかないんだ。

軽く涙目になりかけた時、マリンブルーが、ため息を吐いた。

「なんか、アンタ嫌な感じ。あぁ、コレのせいかな」

そんなことを言いながら、喉元に突きつけていた刀で、首元のネックレスを切った。地面に落下していくネックレスは光を失っていく。
クイーン・ノーベルが私にくれたもの。

絶対に、手放しちゃいけないって。

赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤
赤赤赤赤
赤赤赤
赤赤
赤。

忘れかけていた色が、私の体の中に掛けめぐる。頭の中に電流が走ったようにスパークして、体が熱い。呼吸を忘れかけている喉に息苦しさを覚える。

そんな中で私は、人込みの中の鮮やかな赤い頭髪をした、その人を見つけた。
私はその人に、手を伸ばす。

頭が、体が熱い。
ごめんなさい、クイーン・ノーベル。ごめんなさい。

私は叫ぶ。
私が、危ないことに気付いてくれ。
私に、気付いて。

「——————アルフレッドォォ!!」


〜つづく〜


七十九話目です。
書きたかったシーンだけど、うまく書けなかったです。