複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.249 )
- 日時: 2012/12/08 10:47
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
81・掃除のような魔術。
首筋に手刀を食らった。すぐに意識が昏倒して、視界が黒に染められる。
自分が発した名前の意味も、自分が連れ去られる意味も理解できないまま、なすがままに。
悔しい。なんで私が。理由を説明しろ。もっと否定させろ。もっと暴れればよかった。
そんな事はもうできない。
マリンブルーの瞳だけが、私の姿を見ていた。私は意味が分からないまま、頭の中を赤という色に支配された状態で意識を手放す。
最悪だ。
私の身に最近良いことが怒っていない。
カンコ。そして。レッドライアー。
必ず助けに来てください。
恐ろしくてたまらないから。
+ + + +
大丈夫だ。私は大丈夫。燕を真っ先に助けに行った。声を掛けに行った。そんな雪羽の背中を見る事しか出来なかった私でも、こんなことくらいは出来るから。できるから大丈夫。
ちょっとつらいかもしれないけど。だけど、やるしかないじゃないか。
私だって、人を助けたい。
ジャルドも、ライアーも。
みんな死んでしまう。死なないとしても大怪我だろうから。
だから、私が。
空に両手を翳す。
そんな私に迫るビーストをジャルドとライアーが斬ってくれている。
私は意識を集中させる。
金髪女。多分敵の大将。騎士団の隊長。
そいつの剣が、燕を切り裂く。
無事でいてくれ。みんな死なないでくれ。お願いだから。誰かが死んで、喜ぶ人なんていない。
それが敵でも。
「天————叫————翔————始————終————」
体の芯からジワリと熱が出てくる。発生した熱が、喉元まで迫って来る。口の端から血が垂れる。
少し無理な魔術だったか。
しかしやるしか無い。やると決めた。
瞼がぐっと重くなる。目を閉じるな。
お願いだ。保ってくれ。
ジャルドが心配そうに私を見ている。
けど私を止めない。ありがとう。止めないでくれて。そんなジャルドが好きだ。守りたいと思う。
口の中の鉄分を無理やりに体内に戻す。
こんなところで負けない。私は私に負けない。
こんなキャラじゃ無かったはずなのに。それなのに、こんなに必死になって。
こうしていることも、春海の思惑なのだろうか。
それでもかまわない。
私は今、これがしたい。私がそう思うから。だから止めない。
「大地絶叫」
「みんな伏せろおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
ジャルドが絶叫する。それと同時に私を押し倒すようにジャルドが倒れ、そしてライアーも反応する。
体が硬直してしまった燕の体を押し倒したのは、金髪女だ。
そして、声に反応できた人間が全員伏せる。
直後。
頭上を白い熱が炸裂する。何かの爆発音とともに、目と空気を焼くほどの衝撃。
私の上でジャルドが息をのんだ。
魔術が成功した。
爆発が終わって、体を起こしながら辺りを見渡す。みんなぽかんとしていた。
体を伏せることができなかった、頭の悪いビーストの体がある一定の高さで焼き切られているのだ。色とりどりの血をぶちまけて、上半身をなくしたビーストたちが倒れていく。
その光景を見て、みんなぽかんとしていた。
私はほっと息を吐く。
よかった。これでビーストは消えた。
これで後は人間同士の戦いだ。
それを、止める。
そうだろ? レッドライアー。
〜つづく〜
八十一話目です。
あと少しのはずなんだ……。