複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.254 )
- 日時: 2012/12/14 16:45
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
3・It is believed that it is right.
ヒダリとロムが失敗したということを聞いて、驚いた。
その尻拭いを俺がすることになった。別に嫌じゃない。ヒダリのことは嫌いじゃないし、やる意味はある。後で恩着せがましく何かお礼をしてもらおうかな。
俺はそんなことしか考えていなかった。
ロムはたいてい不機嫌だけど、帰って来たというか目が覚めてからはいつもよりもっと不機嫌で酷かった。失敗したのは、レッドライアーがいたせいだと愚痴をこぼしていた。
俺が行ったときにはレッドライアーなんて居なかった。周りをちゃんと見ていたなら見つけられたかもしれないけど、見つけてはいけないと思った。見つけなくて良かった。
見つけたら俺はきっとそいつをナンパしちゃうから。
右耳にだけ付いた赤いピアスは、そんな俺の性癖を表している。
俺が廊下を歩いていると、前方からよろよろと小さな少年が歩いてくるのが見えた。
早くレジルに声を掛けて、あの女も縛らないといけない。だけどその前から歩いてくる少年があまりに弱弱しかったので、思わず声を掛けてしまった。
「ガーディアン、どうかしたのか?」
彼は濁りきった桃色の瞳を俺に向ける。
ガーディアンは、少年なのか少女なのかわからない顔だちをしている。
小さな形のいい鼻と唇。白い肌と、薄い肩。俺はコイツを男だと信じていた。こんなに可愛いんだ。男じゃないと困る。俺はそうじゃないと俺はコイツを愛せないから。
勝手に決めつけていて悪いが、あいにく俺は女には興味がない。
ロムは別に好きでも嫌いではない。ただの仕事仲間。同じ、雷暝様のおもちゃ。それだけの存在。
俺たちが生きる意味なんかない。馴れあう必要なんかない。ただ、お互いに支え合わないといけない気がする。
そうじゃないと、誰かが壊れてしまうような気がして。
「エ、ソウガくン。帰ってたんダ」
少しだけ芯ののこった共通語。
出会った当初はもっと酷かった。何を言っているのかわからなかったし、表情も無いに等しかった。ヒダリのような感じだった。
それが今では、無邪気な子供のように笑って、そして泣く。
涙は流さないが、みんな泣いている。本当は愛されたいんだ。もっと正しい方法で愛されることを知って居るんだ。本当はこんなこと間違って居るなんて知っているんだ。
だけど逃げられない。俺たちは雷鳴様のおもちゃでしかない。
あの人は、俺たちが折れた足を引きずって掌の上で踊るさまを見て、それを芸術と呼ぶから。
それでいい。それでいいはずだから。俺は何も考えないでいい。ガーディアンはそんなことを考える自由さえ、そぎ落とされているんだから。
俺はまだ幸せ。
「まぁな。ねぇ、どうかした?」
にごりきった桃色は、もはや桃色とは呼べない。俺はその瞳を見下ろしながら、彼の頬の傷をちらりと見た。
きっと殴られたんだろうな。
雷暝様は時々、ストレス解消のためにガーディアンを殴るから。
〜つづく〜
三話目です。
この人たちを掘らないといけないのです。