複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.256 )
日時: 2012/12/16 19:35
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



5・You who become my light.


「おれも、行く」

おれは立ち上がった。レッドライアーとストライプネクタイの男とカンコとレドモンは、そんなおれに驚いた様子を見せる。
当然だった。行きたかった。これで一件落着に見えたが、全く解決はしていない。まだ問題が残って居る。マリンブルーの瞳の男に連れ去られた雪羽のことだ。雪羽は今、どんなことに会っているのだろうか。危険な目や、怖い目にあっていないと良い。
そう思う。それしか願わない。

「雪羽に助けられたんだ。雪羽を助けたい。俺も行く」

強い眼差しでレッドライアーを見つめると、レッドライアーは静かに頷いてくれた。

だが、そんなおれの行動を止める人間が居た。
おれの頭をつかんだのは、新しいおれの親方。
親方じゃないか。女だもんな。
そんな呑気なことを考えていても、頭は冷静なつもりだ。混乱している。けど、それを表には出さない。
冷静にしないと。
もう死ぬべき人間は居ない。それは当然、雪羽にも当てはまる。
雪羽に死んでほしくない。雪羽は大切な人間だ。
おれを目覚めさせてくれた。

「待ちなよ。燕、君は私の部下だぞ。勝手な行動は、」

「ごめん、レドモン。おれは行きたいんだ。行かなくちゃいけないんだ」

おれたちはダルトファルト騎士団三番隊特殊部隊員になったわけだ。
その事におれの仲間は賛成してくれた。もっとじっくり話しておきたいし、レドモンのことも知らなくちゃいけない。でも自体は一刻を争って居るかもしれないのだ。
雪羽が死ぬかもしれない。何をされるかわからない。マリンブルーの目的は一体なんだろうか。
それが分からない限りはどうすることもできない。行くしかない。助けるしかない。
レッドライアーについて行って、雪羽を助けに行くしか。

「っ!! 私の名前を呼ぶなっ!!」

おれの肩をつかんで必死に叫ぶレドモン。
そういえば、名前を呼ぶなとかなんか言っていたな。
そんなレドモンにおれは首を傾げる。レドモンの瞳は恐怖で震えていた。

おれには分かる。何が怖いのかは分からないが、怖いんだ。
おれに似ている。自分がごみだって理解しているときのおれに似ている。すごく。
だから助けたい。レドモンの恐怖をぬぐってあげたい。
おれは何時からこんなに人を助けたいと思うようになったのだろうか。いつの間にか、いろんな人を助けたいと思うようになった。親方を助けることができなかった。
自分を慰めたいだけかもしれないのに。そうだとは思いたくない。
おれは成長しているんだ。育っている。
確実に、ゴミじゃなくなっている。
おれはもう振り返らない。俯かない。

「なんでだ? レドモンはレドモンなのに」

「私はっ! レドモンは汚れているんだよっ! 私はもう汚れているんだよっ!」

明らかに困惑しているレドモン。こんな表情をレドモンがするなんて知らなかった。何時だって自分の正義を信じて、それを貫く女だと思っていたのに。そうじゃなかったらしい。
レドモンも人間なんだ。

結局みんな、どこかが寂しくてたまらないんだ。

「そんなことない。レドモンは綺麗だよ」


〜つづく〜


五話目です。
はい、光が。