複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.258 )
- 日時: 2012/12/18 15:33
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
7・Two persons who should cross and who were not.
「ふふっ」
「なっ、なんだよ!!」
結局素直に笑ったパルが何だか可愛くて笑ってしまった。そんな私にパルは耳まで赤くして叫んだ。私はそれを見てさらに笑ってしまいそうになる。
私はそれでも縄を解くことはできないと思っている。簡単に人を信用することは良くないことだ。そうは思う。悪いけど。
「おい、本当に縄を解かない気か?」
「はい。ごめんなさい。私はまだあなたを信用できません」
ハッキリ言ってしまうと、パルはため息を吐いてしまった。仕方が無かった。
一人じゃなくて本当に良かった。さっきまでの不安は消えてしまっている。一人でこんな闇の中に居たらどんどん変なことを考えてしまっただろうから。
考えてしまったらきっと、自分の嫌なところとかいろいろ分かってしまう。そうしたらもう二度と立ち直れないくらいに凹んでしまう。
私は結局、バカだけどいろんな事を考えてしまうんだ。ネガティブで、うじうじしていて。それを誰かに打ち明ける事なんかできないで、自分の中に固めて入れておく。それがたまりきって溢れてしまったら、どうなってしまうのだろうか。まだわからない。
あとどれくらい、私は自分のことを嫌いになるんだろうか。
パルは私をじっと見つめていた。一回も私から視線を外していない。
アシュリー。あの少女は、どうなったんだろうか。アシュリーはすごくまっすぐな人だった。
戦場では姿を見失ってしまったけれど、ちゃんと逃げる事ができただろうか。不安だ。
あの人は、強い人だと思う。私よりもずっと。だって、きらきらとした瞳でちゃんと現実を受け止めていたし。
それでも、あの銀髪の少年を見つけた時は少しだけぶれたように思う。
「俺はそれでもいいが、それだと少し面倒になるぞ?」
「面倒?」
パルの遠回りをするような説明に私は首を傾げるばかりだ。そんな私にパルは頷く。
しっかりと最後は説明してくれるようだ。
まだ疑問は残っている。
私とパルで、レッドエイジが起こせる?たくさんの人を殺した時代がもう一度?
嘘だ。嘘だ。私はただの一般人で、ただの弱いハンターでしかない。それなのに、なんで。
「チャンスは無い。さっきのマリンブルーの瞳の男は仲間を連れ来るだろ。連れてきたらきっと、お前も縛る。そうなったら二人で床に這いつくばるしかなくなる。それでもいいのか?」
私はすぐに答えを見つけることはできなかった。
パルを信用できなかったらもう逃げだす事はできなくなる。それは、どうなんだろうか。
信用するか、しないか。
私が迷っているところを相変わらずパルはじっと見ていた。
私は、震える手でパルの手を縛る縄を解く。
「OK、それでいい。おい、お前名前は?」
自由になった手で自分の足にまかれている縄を解きながら、パルが立ち上がる。
立ち上がったパルはやっぱり私の胸くらいの身長だった。
「……私は、雪羽です」
〜つづく〜
七話目です。
和解ですよ、ね?