複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.261 )
- 日時: 2012/12/21 13:41
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
10・The key which calls ruin.
『やあ、ライアー。久しぶりだね』
緑色の映像の中で、雷暝が笑った。
確かに雷暝だ。あの嘘くさくて、面倒で、あまり好きじゃない雷暝。信用できないとは思っていたが。まさか、ヒダリたちと組んでいるとは知らなかった。
つまり、だ。クイーン・ノーベルの所に行ったのも何か企んでいたからなのかもしれない。そして、ロムも仲間だ。そして、ガーディアンも。
口の中で歯を擦る。音は出なかった。
緊迫した空気に、燕が戸惑いを見せる。ジャルドも、カンコもだ。
石を翳しているヒダリは全く動かない。俺はそんなことに構ってはいられなかった。
「雷暝っ、お前何をたくらんでいる……!」
なぜかイライラする。
雷暝はヒダリと同じ濃い赤の瞳を細める。
左目を前髪で隠しているせいで、重い印象を受ける雷暝だが、その性格は意外と軽い。
それが不安だった。それが恐ろしかった。
雷暝が俺は怖かったのかもしれない。何を考えているのか全く分からない雷暝が。
『そうだな。ライアーには教えてあげようか。赤き時代だよ、レッドライアー』
「っ」
息をのんだのは俺じゃない。カンコだ。カンコの反応にジャルドも不安そうに顔をしかめた。
赤き時代。
俺はその名前を聞いて、声も出なかった。ただ静止するしかなかった。
あの時代が。あの時代を。もしかして。
手にじんわりと汗が滲んでくる。
「雷暝……まさか……」
雷暝は頷いた。
焦る俺の前で、そうであって欲しくないと願う俺の前で、しっかりと。いやらしい笑みを浮かべながら。
信じられなかった。クオも、あの時代には全く関与しようとしなかった。クオさえも恐れていた時代を雷暝が。そんなわけない。何かの間違いであってほしい。今でもそう思っている。事実が信じられない。そんなことをしようとしているのか。
クオが、悲しむ。だがわからない。
レッドエイジと、赤女。全く関係が見つけられない。
俺は目を閉じることができなくなった。
事実を拒もうとする俺に、雷暝が楽しそうに語りかける。
『レッドエイジは世界を変える。それをもう一度起こすんだよ。世界を変えるんだよ。この腐った世界をな』
「そんなことさせないっ」
声を上げたのは後ろのカンコだった。
湖のような輝く水色の髪を風になびかせている少女。まだ世界の汚点を知らないはずの少女。しかしこの少女は知っている。この世界がいかに汚いのかを。
確かに、この世界は変わるべきなのかもしれない。この世界は今腐っている。ビーストと人間が共存できない。そんな世界を変えたいと思うのは正しい。
やり方が違う。
あんな時代をもう一度繰り返すなら、それは変動じゃない。破滅だ。
『へぇ? そうだね、ワタシを止めてみてよ。ゲームをしようか。ワタシの可愛い手駒たちと、ゲームをしよう』
〜つづく〜
十話目です。