複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.263 )
日時: 2012/12/24 13:44
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



12・The man of revenge, reincarnation.


地獄への招待状を届けた私たちは草原の真ん中を通る道で合流した。
雷暝様に呼び出された時は怒られて、お仕置きを受けるものだとばかり思っていたけれど、そんなことは無かった。ただ、カーネイジ・マーマンと、レッドライアーに雷暝様の言葉を届けるだけだった。
そんな仕事は、私とこの男、ヒダリに掛かれば簡単な物なんだ。
合流した私たちは珍しく何もしゃべらずに歩き出した。いつもなら私がヒダリに何かしら声を掛けるが、あんなことが会った手前、なんでか声を掛けずらい。私が何も言わなければ、何も喋らないヒダリはもちろん何も言わない。
ヒダリの声は私でも聞いたことが無い。雷暝様でも聞いたことは無いだろう。

なんで私なんか助けたんだろうか。
私は何時もヒダリにきつく当たっているし、私が左のことを只の道具だと思っていないことは知っているはずなのに。
私はヒダリを道具だと思っている。私は戦うのが得意じゃない。だから、私の代わりに動いてくれるただの道具。そうとしか思っていないっていうのに。

「……ヒダリ、私のことどう思ってる?」

問いかけてみた。他に言葉はあったはずなのに、なんで私はこの言葉を選んだんだろうか。
私はバカだな。聴いてもヒダリが答えないことくらい知っているのに。
ヒダリはずっと前を見てる。ヒダリはやっぱり答えない。反応もしない。
私は俯いてため息を吐いた。
ヒダリのことを、本当はもっと理解してあげなくちゃいけないんだと思う。
でも、どうすれば。あの変態なら。ソウガならどうするだろうか。意志疎通の方法。
私は自分の掌を見た。女らしい、細い手。ソウガの手は、ちゃんとごつごつした男の人の手。
そんな手を持つソウガなら、ヒダリの思いをどうくみ取るだろうか。

悩む私の体が、突如浮いた。足元に地面がない。
そして、背後で何かがはじける音。
顔を上げる。ヒダリのフードが見える。担がれてるんだ。
ヒダリが地面を軽やかに蹴り上げて、体制を整える。私は体をよじってヒダリの肩から飛び降りた。
そして、私が居たところの地面が抉れていることに気付いた。

後ろからの襲撃。全く気付かなかった。

「貴方……だれ……」

私がつぶやく。ただの男じゃない。ヒダリさえも警戒を始めた。私は自分の腰辺りを指でたたく。
時に長く、時に短く。

私を狙った男は、妙な外見をしていた。
人工的に作ったかのような茶髪。左目は濃い青だが右目は色素の少ない凄く薄い青。右耳には金属の太い円盤のような物がついてあってその上にそれより一回り小さい物がくっついている。そのつなぎ目からは赤、黄色、青、緑の導線が飛び出していて円盤の中心から伸びていてそいつの腕の間接辺りまで来ているのはプラグ。左頬の剥き出しになっている金属の板。
異端。異様。見たことがない。

男は笑いもしなかった。
ただ少しだけ、目の中のメモリを動かしただけだった。

「……俺はアスラ」


〜つづく〜


十二話目です。
久しぶり!!