複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.264 )
- 日時: 2012/12/25 14:39
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
13・It is the strongest at two persons.
もちろん聞いたこともない。見たら忘れない奇抜な姿をしているが、見たことない。
私は眉をしかめた。そして、指を動かすスピードを速くする。
それを、なんとアスラが見たのだ。飛行船の上では赤い物で身を固めた女が私の行動を見ていた。だが行動を起こしてくれなかったので助かった。
この私の行動に関して、何も不審感を抱いてくれなければいい。
私は額に汗を感じた。
何を焦っているんだ。初対面で、得体の知らない男が現れたからか?まさか。そんなことで私は動じない。そして、ヒダリだって動じないはずだ。
なのに、私どころかヒダリさえも警戒をしているなんて。
この男は、どこか変だ。それは外見だけじゃない。取り巻く空気。何か重い物を感じさせる周りの空気を感じる。
なんだこれは。彼の感情が読めない。ヒダリで無表情なのは慣れているはずなのに。
「で? 何の用?」
私は平然を装った。
何もないふり。何も感じていないふり。
それをしていれば、相手も少しは本性を出すと思った。
しかし、出さない。彼は動かない。何もかも。微動だにしない。
ヒダリと同類なのか?ヒダリと同じような人間がこの世界に居るとは思えないが、この男が普通だと思いたくないという方が勝る。
私の問いかけに、アスラはやはり眼の中のメモリしか動かさない。
「明確に言えば、お前たちに用が有るわけじゃない」
「はぁ?」
情けない声を上げてしまう。
私は今イライラしている。
さっきもヒダリに助けられた。そんな命令をした覚えはない。ヒダリが居なければ、ヒダリが自発的な行動をしなければ、私は死んでいた。
その事実が、酷く心を揺さぶる。
「俺は、お前たちのボスに用が有るんだ」
ボス。とっさに雷暝様の姿が浮かぶ。
雷暝様に、何の用が有るっていうんだ。
敵か。この男が雷暝様にとって良くないことをすることは確かだ。
それなら、生かしては置けない。
雷暝様の敵は、私たちの敵。要らない存在。消すしかない。
私は指を大きく弾いた。
それと同時に、隣のヒダリが飛び出した。
急に動き出したヒダリに、さすがのアスラも驚いているようだ。しかし退かない。ヒダリに向かって、右手を突き出す。それを避けるようにヒダリが跳躍。空中で体をひねり、蹴りの体勢。
アスラはそれでも退かない。
右腕を防御に使った。ヒダリがはじかれるが、アスラも強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。
アスラが体勢を整えて、私を睨みつける。
その間も私の指は動き続ける。
「悪いけど、アンタに構ってるほどの時間は無いの。ごめんね」
ヒダリがナイフを取り出す。
それに気づいたのかアスラが体に力を込めたが、遅い。
ヒダリのナイフが、アスラの腹に突き刺さる。
私はそれを見ていた。無表情で動くヒダリを見ていた。
〜つづく〜
十三話目です。