複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.265 )
- 日時: 2012/12/26 17:21
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
14・It must surely have crossed at somewhere.
そして俺は右腕を振りかぶった。
目の前の男はいたって冷静だ。
もしかしたら俺よりも冷静かもしれないと思うほど。そんなことを考えてしまうほど、動かない。何もくみ取れない。
そんなコイツに恐怖してしまいかけるが、こんなことで恐怖している暇なんか無い。
コイツ等を止めないといけない。
あんな時代を再び起こそうとしている輩がいるかもしれないのなら、それを止めなければならない。
それは俺の使命だから。誰かが勝手に決めたわけじゃない。俺が望んだ訳じゃない。
俺の大好きなマスターが。マスターが俺に任せてくれたこと。
もう二度と、あの時代を呼び起こしてはいけない。
俺はそのためになら命だって賭ける。
痛みなんか感じない。痛みに恐怖なんてしない。
俺が怖いのはただ一つだ。
あの時代がまた起こる事。あの時代を再び見ることになる事。
俺はもう二度とあの時代を体験したくない。あんな死が目の前に広がるだけの時代なんかあってはならない。
人だけじゃ無い。星を、この星をあの時代は殺す。人の感情や希望だけじゃない。
あの時代は、すべてを赤く染めてしまうのだ。
それだけは避けなければならない。
俺の右腕に反応したのは女だった。
さっきから動く様子は無いから別に気にしては居ないけれど、反応はいいようだ。
彼女の指が止まった。そして、俺とフードの間に滑り込んできた。
俺のつきだした右手はナイフよりも強い衝撃を起こす。
俺は腹の痛みを感じないようにしながらそれを突き出した。
女の左肩を、俺の右手が抉る。
肉が飛び散る。と同時に、フード男がナイフの柄を離す。
俺は痛みに恐怖しない。だからこそ、攻撃を受けた。あのまま距離を開けたままでは俺には不利だったから。俺は接近戦の方が得意だ。
女がフード男に抱き着いたまま吹き飛ぶ。二人で地面に倒れこんだ。
女の左肩は形を失っていた。それでも立とうとする女。
フード男は訳が分からないというような顔をしていた。いや、していない。表情なんか一ミリだって変えていない。
女が立ち上がるのを見て、自分も立ち上がる。女は右手で左肩を抑えて、顔面を地面にこすり付けていた。きつく喰いしばった口から唾液と血液を垂れ流す。さっきの衝撃で口の中をかんだようだ。
俺が一歩近寄っても女は反応しない。俺を必死に睨みあげる。
フード男は動かない。
「おい、ボスのもとに案内しろ」
「っあはっ、はっ、ははっ。案内なんか、するわけないじゃないっ。あんた、速い、わねっ、はははっ!!」
女は笑った。けたたましく笑った。ずっと笑っていた。
その声がひどく耳触りで、俺は女の腹を蹴り上げてしまった。
〜つづく〜
十四話目です。