複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.269 )
- 日時: 2012/12/28 14:12
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
16・The premonition of same kind discovery.
「一緒のこと?」
レッドライアーはすっきりとしたような顔をしていた。
何か、コイツの心が変わるようなことがあったのかもしれない。それが何かなんて俺には関係ない。
後ろの少年は訝しげに俺を見ている。俺の姿に驚愕しているようだ。
見たところ赤い女が見当たらない。多分、あの二人のボスにとらわれている。
そして、始まろうとしている。レッドエイジが。あの時代が始まろうとして居るんだ。
それを止めるために俺は動き出した。そしてコイツ等は、赤女を助けようとしている。同じ事だ。コイツ等の目的と、俺と。
世界の運命がかかっているかもしれない。ただこれを話したところで、コイツ等が理解できるかわからない。話さない方がいいだろう。
人は嫌なことから目を背ける傾向がある。
俺もそうだった。
だけれど、背けなかった。背ける事ができなかった。自分の憎しみが、事実と俺を向い合せた。
その結果がこれだ。俺は事実と向かい合って居る。
憎しみに感謝すべきだ。憎しみのおかげで俺は前を向いている。
そのせいで、全く光を見ることはできないけど。憎しみとか、いろんな嫌な感情しか俺を支配していないけど。
それでも、事実を受け入れないよりもましだ。
そんな情けない人間にはなっていないから。俺はまだ、生き残る事ができる。
マスター。マスターの事はまだ頭から離れない。アイツへの憎しみはまだ消えない。消えるわけ無い。
俺の手でアイツを消すまで、俺は光を見ることはできない。
マスター。
まだ俺を見てくれているだろうか。俺は、マスターの思いを叶えたい。
俺はマスターの無念を晴らしたい。
俺は。
「そうだ。とにかく、急ぐぞ。あの女が厄介事を起こさないうちにな」
「アスラもついてきてくれるのか?」
ライアーは歩きだそうとする俺の肩をつかんだ。振り返ると、俺を警戒していないのはライアーだけだった。紳士風の男も少女も、少年も俺を詳しく知らないんだった。
紳士風の男はハラダ・ファン・ゴで出会った時のようにシャツをしっかり着てはいなかった。裏の部分を俺に見せている。普通に。
俺は振り返ると、目の中のメモリを震わせる。特に意味は無い。
「……俺は、アスラ。一応味方だ。信じることができないなら別に信じてくれなくていい」
ふんと鼻を鳴らすと、明らかにライアーが苦笑いをして、紳士風の男が眉を顰めて少女が苦そうな顔をした。嫌われているようである。
しかし、好印象を与えることに成功したのが一名いた。
二本の髪の束を左右にぶら下げた少年だ。
「おれ、燕!! よろしく! アスラ!」
〜つづく〜
十六話目です。