複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.271 )
日時: 2012/12/30 14:35
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



18・One person who will accept it in the body.


「これからどうする?」

目の前を進んでいたパルが振り返って来た。
もちろん声を潜めて、私の顔色を覗ってくる。
私は悩むように床に視線を落とした。私は別に何も考えていない。
何をすればいいのか分からない。だけど昔のようにすべてをパルに任せるわけにもいかない。百パーセント信じたわけではないからだ。パルにすべてを任せれば、私の身が危なくなるかもしれないのだ。私の身がかかっている。
私は、ライアーのもとに帰りたい。
帰って聞かなくちゃいけないことがあるから。
私は必死に頭を使った。私たちはこれからどうすればいい。
とにかく、ここからでなくちゃいけない。ここから出て、そして私たちが居るべき場所へ帰らなくちゃいけない。

「とにかく、出口を探しましょう」

私も声を潜めて。
廊下は怖いくらいに何も音がない。私たちは今止まって居るが、私たちの呼吸さえ聞こえないくらいだ。

みんなは今頃何をしているだろうか。
私を探してくれているだろうか。そんなことを考えると辛くなってくる。
私を探してなんかないんじゃないだろうか。
そんなわけない。そう信じたい。
私はみんなのことが好きだ。ライアーと一緒に居たいと思う。だから帰りたい。私も、ライアーにとって私もそんな存在であってほしい。
私と出会った時は、すごく冷たい人だった。私の警戒をしていたくらいだ。それなのに、ライアーは最近優しくなったと思う。
ライアーはもう一人じゃない。私も一人じゃない。
そうわかっている。

私は心臓を落ち着かせた。
大丈夫だ。見つからない。
パルは頷いた。
そして歩き出す。この建物の出口から無事に出られるとも限らない。それどころか見つからないかもしれない。
それでも行くしかない。探さないといけない。私は静かについて行った。

「なぁーにやってんの?」

首元を掴まれた。
骨が軋む音が耳まで響く。そして、後ろに引っ張られた。床に突き飛ばされて、背中から倒れこむ。
パルが私を見てくれた。
まるで、飛行船から私に手を伸ばした時のライアーみたいな目で。

「あっれぇ? なに? 抜け出しちゃったわけぇ?」

見上げると、白衣を着た白髪の男が立っていた。パルの物より暗い緑色の目と、白髪についた色とりどりにヘアピン。

見つかった。

私は勢いよく彼の足に飛び掛かった。
男がよろけて床に倒れる。私は急いでそれに馬乗りになった。
普通の男の人よりも瞳が大きい。それを勿体なく彼は細めた。

「っち。んだよ、ちょっと声かけただけじゃんか」

「わ、私たちは、行かなくちゃいけないんです」

震える声。でもパルが駆け寄ってきてくれた。
つまらなそうにしている彼は面倒くさそうにしている。体をよじることもしない。

「だっからぁ、別に声かけただけじゃんか。俺様はお前らのことを雷暝に伝える気もないっつのぉ」

「……え?」


〜つづく〜


十八話目です。
レジルさんも久しぶりかな?