複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.272 )
- 日時: 2012/12/31 12:50
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
19・Time when the person himself comes back.
雷暝に伝える気がない?
何を言って居るんだコイツは。
みんなみんな、雷暝のことは雷暝様と言っていたはずだ。コイツも、俺とあの部屋であった時は普通の人間だった。
それなのに、なんでか今は違う。コイツは知らない。いったいコイツは誰なんだ。俺はコイツを知らない。雰囲気が違う。
雪羽が俺を振り返って、意見を求めてきた。
俺にだってどうすればいいのか分からない。
俺は考える力がない。何時だって、アシュリーに任せてしまって来たから。俺は銀やムーヴィやアシュリーが居ないと判断力が鈍る。
しかし俺は今一人じゃない。
雪羽という女がいる。雪羽も帰りたいと言っている。俺だって帰りたい。
二人で生きて出ないといけない。俺は雪羽を見捨てることはできない。雪羽が抱えているものを知って居るから。
雪羽は、レッドエイジに振り回された人間の一人だ。俺と同じ。
俺もレッドエイジのために命をささげないといけないのかもしれない。詳しくは分からないけれど、俺はレッドエイジのために死にたくは無い。
俺が命をささげてもいいのは俺の仲間にだけだ。だから死ぬわけには行かない。
俺の判断を待っている雪羽。
どうする。どうすればいいんだ。俺は、どうしたら。
俺が自分で考えないといけない。俺のために。俺自身のために。
「本当にか?」
俺は白髪の顔を覗き込む。すると、白髪は子供のように唇を尖らせた。その姿が銀に重なって思わず顔をそむけてしまう。その様子に雪羽が首を傾げている。
仕方がない。こうやって、子供みたいな無垢な表情をされると、銀を思い出してしまうのだ。
あの、けがれることの無い白銀を。
銀は今元気だろうか。銀は生きるべきだ。
この世界を知るべきだ。まだ知らないことがここにはたくさんある。この世界で見るべきことが、知るべきことがたくさんある。
銀は愛されるべきなんだ。
俺と違って。俺は、俺のかあさんはけがれてしまっているから。魔術を使えるようになったのも、母さんに投薬されたから。
俺の体は薬で汚れている。俺は魔術を使えるけど、それは正しい方法じゃない。
俺も母さんみたいに罰を受けるのかもしれない。だとしたら、最後まで銀たちと一緒に居たい。
彼らと一緒に最期を迎えることができるなら、俺は怖くない。
何も怖くない。
「本当にほんと。信じてくれないわけぇ? 今のうちに信じてくれないと大変なのはお前らだと思うけどぉ?」
「どういう意味だ?」
白髪が妙なことを言うので俺も身を乗り出した。
俺の反応に白髪は面白そうに笑う。
それは違う。それは全然銀に似ていない。
「そろそろ、俺様は俺様じゃなくなるから、だよ」
〜つづく〜
十九話目です。
レジル君の秘密。