複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.274 )
- 日時: 2013/01/03 14:23
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
21・Connect us by tenderness.
「そうかー。逃げたかー」
雷暝様は相変わらずにやにやと笑って何を考えているのか全く分からない。
俺はそれに恐怖を感じるがもうすでに慣れていることなので対して反応を示さない。
逃がしたことを怒られると思っていたので、雷暝様の反応は意外だった。まるで当然のような事のような反応だ。
床に転がって咳き込むガーディアンを見るけれど、だいぶ長い時間殴られていたのか体力がないようで、気を失うように眠ってしまった。
そんなガーディアンを雷暝様をゴミを見るかのように見てから俺の横を通り過ぎる。
ガーディアンをゴミとしてみる雷暝様の気持ちは分からないでもないのだ。
ガーディアンは言葉を覚えるのに時間がかかったし、人間とは思えないほど早いし強い。背中から生えた悪魔の羽のようなものの正体も全く明かしてくれない。あれで空を飛べるわけでも無い。
俺は部屋を出ていく雷暝様の後を追う前に、ガーディアンをソファーの上に移した。
雷暝様に怒られるかもしれないけどあそこで眠ったら風邪をひいてしまうかもしれない。
自分が何でこんなことをしているのかは良くわからない。ガーディアンに同情しているのか。
まさか。有り得ない。俺にとっては仲間なんてどうでも良いのだ。
仲間なんて。俺たちは仲間じゃない。そうじゃない。
ガーディアンが目を薄く開く。
唇が切れて血がにじんでいるし、頬はぼこぼこだし、ガーディアンなんか見ている時間なんかない。
ただの気まぐれで優しいことをした俺に、ガーディアンは小さく笑った。
弱弱しすぎて笑ってしまいそうになるような顔。ガーディアンは俺に笑った後、かすかに唇を動かしてからまた意識を失った。
お礼を言ったのだろうか。こんな俺に。
『おーい。早くいかねぇとまずいんじゃねぇの?』
頭の中に言葉が響く。
俺はそれに従うかのように部屋を出て雷暝様の後を追った。
雷暝様は俺のことを見ることもなくずっと楽しそうにしている。
これから始まるゲームに心が躍っているんだろう。
「今はソウガが二人を追っています。ごめんなさい、俺の責任です」
俺が雷暝様に声を掛ける。
俺より少しだけ身長が低い雷暝様はまっすぐに前を見ていた。
「分かった。大丈夫。俺もこれを狙っていたんだ」
俺は間抜けた声を出しそうになったけど、これは予想外のことでも無かったので口を塞ぐ。
全部予想していたんだ。それに俺たちは振り回されている。珍しいことじゃない。こういう状態に疑問を持ってはいけないって知っている。
俺たちは雷暝様の掌の上で踊っていればいい。ただそれだけでいい。
ガーディアンの弱弱しい笑顔が脳裏をよぎる。
なんでこんなことを思い出すのだろうか。
訳が分からない。
「あの二人には仲良くなって貰わないと困るから」
〜つづく〜
二十一話目です。