複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.275 )
- 日時: 2013/01/04 16:46
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
22・The good palm of comfortableness.
雷暝様の言葉に俺は何も言えなかった。
確かに仲良くなってほしいのかもしれないけれど。でも俺はなんでかそれに賛成できなかった。
仲良くなってほしいかどうかなんて、いくら雷暝様でも決めていいものじゃ無い。
まるで、実験道具じゃないか。
実験道具。
その言葉を思い出す度に、俺は自分の研究所を思い出す。
俺は科学者だ。
アスタリスクの事を憧れた、科学者。
世界最強の人工知能。
それを追うために雷暝様に近寄った。
アスタリスクのことを見つけることはできなかった。
アスタリスクは、神に最も近くなったのかもしれない。
アスタリスクとは一体どんな姿をしているのか、どんな方法でつくられたのか、誰がアスタリスクを作ったのか。
それを知りたかった。それなのに。
俺はいったい何をしているんだろう。
雷暝様を喜ばせるためにやって居るわけじゃない。そのために生きている訳じゃない。
俺はアスタリスクを解明するんだ。そのために。
俺はそのために生きているんじゃなかったのか。
俺は一体、何がしたかったんだよ。
『いちいち考えるのって、面倒じゃねぇ?』
雷暝様は帰ってきたヒダリとロムに連絡を取っている。
雷暝様の横顔を見るたびに心が痛む。
雷暝様のことを愛している人間が、俺たちの中に居るのだろうか。本当は、誰も雷鳴様のために生きていないんじゃないだろうか。
だって、きっとみんな自分のために生きている。自分の居場所が欲しいだけ。自分の死に場所が欲しいだけなのかもしれない。
俺は違う。
俺はアスタリスクを追い求めている。
アスタリスクのために雷暝様のもとに居るだけだ。
『なぁ、止めようぜ。楽なのが一番じゃねぇか』
本当は、この言葉に耳を傾けてはいけない。
俺は俺が思うとおりにやればいい。ただそれだけでいい。俺は、俺の考えるとおりにやれば。
ただそれだけで良いはずなのに、俺はこうやって悶々と考えてしまうんだ。
今度、ソウガとでも話をしよう。
そして、アイツの心を聞いてみよう。お前はどんな思いで雷暝様のそばにいるのかどうか。
それを聞いてみなければならない。
俺はどうしても仲間が欲しい。
「さぁてと、少しだけ遊んであげようか。ねぇ、レジル?」
楽しそうに笑う雷暝様の側に俺が居る。
いつもは強いソウガとか、素直なヒダリとかを可愛がっている雷暝様が、俺に問いかけている。俺の意見を求めている。
今は俺だけを見てくれる。
俺が負けたら、俺がゲームで負けたのなら、雷暝様の瞳に俺が映ることは無くなるんだ。
「そうですね」
それがさびしいと思っている時点で、俺はもう雷暝様の掌から抜け出せないのかもしれない。
〜つづく〜
二十二話目です。
あけおめーーーーことよろーーーーーでっす!