複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.276 )
- 日時: 2013/01/05 14:56
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
23・I will keep company for flight.
パルの判断でさっさとあの白衣の男から離れることになった。そして二人で取り敢えずとにかく一階に行くことにしたのだ。
出口を探さないといけない。早くここから出たい。ここから出ることをしないと何もかもはじまらない。
私たちは静かに移動をしていた。会話は無い。
でも確かにパルは凄いと思った。明らかに私よりも年下なのにこんなにしっかり判断する事ができるなんて。羨ましい。
私はいつまでも成長できていない。私は進みたいと思っている。
でもどうやったら良いんだろうか。
この間決意したばかりなのに、またこうやって揺らいでいる。
私よりもすごい人は腐るほどいるから。
私なんかが頑張ったところで、誰かを守ることができるんだろうか。私のこの小さな掌で、すくい取れる物が何かあるんだろうか。
私はそう考えてしまっている自分が嫌いだ。
私の友人である彼が、命を助けてくれた。私の命は、私だけの物じゃない。彼が頑張ってくれたんだ。
私は拳をぎゅっと握りしめた。
頑張ろう。
余計なことを考えるのは止めよう。
私が何かを考えたところで、いくら自己嫌悪に陥ったって、この状況からは抜け出せないのだから。
私は後ろは振り返った。
本当に見つかっていないだろうか。
私たちは本当に、ここから逃げ出せるのだろうか。私は静かに目をつぶった。
パルが曲がり角を右に曲がろうとしている。
私は目を開いて急いでそんなパルの首元をぐっと引いた。
直後曲がろうとしていた右の廊下から、あのマリンブルーの瞳の男が現れた。
セミロングの髪を結わないで揺らしている。深い紺色の髪。
飛び出してきたわけでもない。
ただするりと現れたのだ。
私たちは息を呑んだ。
私はとっさにパルをさがらせた。私はマリンブルーを睨みつける。でも恐怖で瞳が濡れている。ぜんぜん効果は無いかもしれない。
見つかった。
最悪だ。
私は後ずさりもできなかった。
ただ怖い。怖い。何をされるのだろうか。
私の背筋が凍った。
「やぁ。パルちゃん。お散歩かな?」
私なんか見えていないかのようにマリンブルーはパルだけを見ている。私はもう一歩パルをさがらせる。
そんな私にパルは困惑しているみたいだ。
当然だろう。自分よりも弱い人間に庇われているなんか最悪なはずだ。
そこでようやくマリンブルーが私の頭をつかんだ。そして、顔を引き寄せる。
ライアーのようにやけに整った顔。白い肌。
私はそれから離れたくなった。
びっくりした。体を動かそうとした時、マリンブルーは私の頭を壁にたたきつけた。
酷い衝撃。声が詰まって、肺が潰れそうになる。頭から血がなくなったこのように冷たい。
「雪羽! っおい!!」
声が聞こえなくなる。体から一気に力が抜ける。
私はそれでも必死に目を開けていた。
そして、マリンブルーの歪む口元を見上げた。
〜つづく〜
二十三話目です。
よく頭をたたきつけられますね、私の小説のキャラクターは。でも一番よくわかる痛みなんじゃないだろうk((