複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.277 )
- 日時: 2013/01/06 12:37
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
24・The apology which put tender feeling.
雪羽が倒れた。
だが俺は駆け寄る事はできなかった。雪羽は意識を失ったようだ。ピクリとも動かない。死んではいないだろう。しかし脳に損傷ができてしまったかもしれない。
俺は唾を飲み込んだ。俺はそしてマリンブルーを睨みつけた。
怖くてたまらない。
何も見えなかった。雪羽の頭が壁にたたきつけられるのを見られなかった。
早すぎる。有り得ない。コイツは強い。強すぎるんだ。
俺が怯えているのをわかっているのか、マリンブルーは嫌な笑みを浮かべている。
どうしたらいい。一人になってしまった。守るべき雪羽は起き上がれない。
俺を助けてくれた雪羽。
なんであそこで俺を後ろから引っ張ったのか分からない。マリンブルーが来るのが分かったのか?
そんなまさか。
有り得ない。それこそ本当に。
あんなぼけっとした雪羽に。
雪羽を気に掛ける俺にマリンブルーはずっと笑っている。
「仲良くお散歩なんて、妬けるなぁ」
マリンブルーが舌なめずりをした。首を横に傾けて、思ってもいない事を口にする。
コイツは変態だ。それは確信している。
右耳にだけ着いた赤いピアス。つやのある紺色の髪。
何もかもが恐ろしいのだ。
顎から汗がしたたり落ちた。
やっと逃げ出せたのに、また見つかってしまった。俺たちはもう逃げることができないだろう。
俺は動けない。恐ろしい。
俺は怯えている。最悪だ。
また逃げる気か。
誰かが居ないと俺は強くなれないのか。いや、違う。
俺は意識を集中した。
魔術を発動しよう。何を使う。
取り敢えず、氷魔術。
マリンブルーの足止めをしないと。
身動きができないようにしないと。
詠唱は省略する。省略すると体に負担がかかるが、それが何だ。雪羽は身を挺して俺を守ろうとしてくれた。
なら俺もお返しをしないと。
大丈夫だ。俺には母さんの魔力がある。絶対に、アンダープラネットに引きずり込まれることは無い。
俺は強い。
暗示をかけるように繰り返す。
俺は強い。
「あっは。ほんと、たまないよ、パルちゃん……」
マリンブルーが目を細めた。俺はそれに気を取られてしまった。
集中していた精神が壊れた。完成間近だった魔術が崩れていく。
俺はもう一度集中を始めた。
「ごめんなさイ」
声だった。すぐ後ろで聞こえた。
語尾が固い声。どこかで聞いた。
そうだ。
ガーディアン。美しくない銀。雷暝に汚されているガーディアン。
俺は振り返ろうとした。
しかし、それは許されなかった。
頭に衝撃。すぐに意識が闇の中に沈んでいく。
俺は前のめりに倒れていった。
自分の体をかばう暇もないほどに、体から力が抜けた。
〜つづく〜
二十四話目です。