複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.278 )
日時: 2013/01/07 18:04
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



25・If all impending things are regarded as fortunate.


「ガーディアン、ナイスタイミングー」

「ソウガくン、真面目にやらないと雷暝様に怒られるヨ」

ガーディアンは俺に呆れたような視線を向けて赤いジャージの女を抱き上げる。
ガーディアンは本当はこんなことはしたくないのだと思う。パルを殴るときに、とても嫌そうな顔をしていたから。
ガーディアンの考えることはいまいち分かっていない。
根は優しいコイツが、雷暝様に思考回路を徐々に侵されているということはわかっている。雷暝様にこのままずっとこき使われていたら、ガーディアンはきっとろくな人生を歩まない。
本当の優しさを知らずに、狂った幸せだけを抱きながら死んでいくのだろう。俺はそんなガーディアンを可哀想に思いながら、絶望を感じながら死んでいくガーディアンを見てみたいとも思っている。
結局、みんな雷暝様に壊されているんだ。
俺も。

「いやいや、俺は真面目にやっていたよ? ただパルちゃん強くてさぁ」

俺の言葉を聞きながらガーディアンは二人が居た部屋に足を向ける。
俺もパルの体を抱き上げた。小さくて軽くて、いかにも壊れてしまいそうなからだ。
パルも雷暝様に壊されるんだ。パルも俺と同じように壊れるんだ。
そう思うとにやける口元を抑える事ができない。
俺が変態だってことはもう誰でも理解している。俺はだからここで遠慮なく変態ぶりを発揮できるのだ。

ガーディアンの後を追いながら、俺はさっきのことを思い出す。
俺に反抗的な目を向けた赤女。
アイツを雷暝様が必要としているから俺がわざわざ迎えに行った。その前にレッドライアーを始末する予定だったらしいが、仲間がいたらしくそれは失敗に終わった。
ヒダリとロムがしくじった。
そして俺は成功した。
雷暝様に少しだけ褒めてもらったし、俺は後は勝てば良いだけだ。ゲームで勝てばもっと雷暝様が褒めてくれる。
そして何より、俺の居場所がなくならないで済む。俺には帰る場所がない。
いや、ここ以上に快適な場所なんてない。負けなければ、俺は永遠にここに居ることができる。なんて楽なんだろうか。
俺は負けない。俺のために負けるわけにはいかない。
後は雷暝様の楽しみを壊さなければいい。
雷暝様が企んでいること。それは世界を揺るがすこと。新たなる時代の蓄積。
雷暝様のしていることは正しくないのかもしれない。
でも俺はそんなのはどうでもいい。俺はここがたまらなく心地いい。
それ以上の理由なんかいらない。

「また嘘をつク。あのネ、ソウガくン。あんまり嘘をつくと人に信頼されなくなるヨ?」

ガーディアンの身長は低いので俺を見るときは自然と上目遣いになる。俺はそれに少し興奮しながら、ガーディアンの隣に並んだ。
そしてガーディアンは照れたようにはにかむ。

「マ、コッチはずっとソウガくんのことを信じるけどネ」


〜つづく〜


二十五話目です。
ガーディアンの一人称ってすでに出ていましたっけ?
<<<憶えてない>>>