複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.281 )
- 日時: 2013/01/13 11:32
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)
28・It murmured "Don't repent."
もしかしたら雷暝に騙されているんじゃ無いだろうか。この可能性もある。
しかし俺は一人じゃない。それは凄く励みになることだ。
燕もいる。アスラもいる。ジャルドも、カンコも居る。俺は一人じゃない。
だからこそ、挑むべきだ。俺は一人なら悩んでいたかもしれない。でも俺に命を預けてくれる人が居る。こんなに居る。
本当は慎重になって、悩んで、ぐずって、それで出した答えで、本当に安全な道だけを選ぶべきなんだろうけど。
迷ったならきっと俺に道を示してくれる。
コイツ等が、俺を導いてくれる。俺の背中を押して、俺とペースを合わせてくれるだろうから。
だから俺は今迷いたくない。
せめて今だけは、挑戦的でちょっと情けなくて頼りないかもしれないけれど、それでも今は挑戦させてくれないか。
俺が言ったらみんなは頷いてくれた。
俺と雷暝はとりあえず同じクオの配下で指示通り動いていた仲だ。
俺は集団行動は好まないからたまにしか仕事は一緒にしなかったけれど、でも一度くらいは雷暝のいるところに足を運んだこともある。
趣味の悪い所だった。
闘技場を囲むような円型の建物。そこには同じような部屋しかなくて、住んでいる奴らはみんな変人で生きているような目をしていなかった事も覚えている。
そしてそいつらが異様に雷暝を慕っていたということも、そして本当は雷暝との関係は美しい物じゃないっていうことも。何となく分かった。
俺はそれで、クオの下で動けることを初めていことなんだと思った。
今まで道具のような存在なんじゃ無いかって思っていたけれど、クオはいつまでも俺を愛してくれた。ユコトも俺に剣を教えてくれたり、勉強を教えてくれたりもした。
あの二人の関係もきっと綺麗な物なんだって事も知っている。
あの二人は、いわば俺の両親でもあるのだ。
俺に嘘吐きと言ったクオのことも、俺は愛している。信頼している。
俺はこのままで良い。
そして、クオ。
俺には守るべき物ができたんだ。
雪羽って言ってさ。俺の大嫌いな赤色が大好きで、バカで。弱いくせに頑張って、がんばるくせにすぐ落ち込んで、落ち込むくせにまっすぐで。
ぜんぜん俺と違うけど。
アイツの黒い髪と黒い目が俺は欲しいんだ。
絶対あの黒髪と黒い目を手に入れて、そして俺は完ぺきな黒い色を手に入れるんだ。
そうしたら。
そうしたら俺はきっと。
「これから、戦う」
「え?」
突然口に出た言葉は震えもしていなかった。
俺は青い空と被る地平線を見ている。
俺は今、強くなっている。いつも以上に強くなっていると思う。
アスラたちの方を振り返る。
きょとんとした燕、そして俺をじっと見つめるジャルドとカンコとそしてアスラ。
「これから戦って、んで、多分傷ついたりすると思う。俺のことで傷つくと思う。でも俺は、謝ったりしない。絶対、謝ったりしないから。だから……」
そこまで言ってから視線を落としてしまう。
そんな俺の肩を、そっとジャルドが掴んできた。俺は顔を上げる。すると俺を引きずるようにジャルドが歩きはじめる。
そうだ。俺たちは急がないといけない。
「お前が謝らない、か。面白いじゃん?」
アスラはふんと鼻を鳴らし、カンコは珍しく小さくほほ笑む。
燕は訳が分からないような顔をしたが、すぐににかっと笑った。
「心配しなくても最後まで付き合うって」
〜つづく〜
二十八話目です。
最近鉄楽レトラっていう漫画をよみました。
いいねいいね、青春っていいですね。