複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.283 )
日時: 2013/01/16 17:26
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)



30・Consciousness of the red room.


目を覚ました。
柔らかな生地が私の体を包んでいる。私の手がその生地を掴んでいることに気付いて、ゆっくりと体を起こした。

赤一色だった。
自分の体が埋まっているベッドも何もかも。壁の床も、家具でさえ。
自分が着ている豪華ではないものの、やはり柔らかくデザインが可愛らしいドレスも、赤。
私は強烈なその色に眩暈を憶えたが、急いでベッドから足を出した。
床に足を下ろす。足には赤いリボンが撒いてあった。
自分の姿が人形のようで妙な不気味さを憶える。

私の胸が見えない程度にまで削られた胸元の布。それが恥ずかしくてベッドの赤いシーツを引きはがした。
それを胸元にあてて、部屋全体に視線を巡らせる。
すると、部屋の扉が開いた。
濃い赤色の扉。
そこから顔をのぞかせたのは、チャイナドレスを身につけた雷暝だった。一度見ただけではあるが、忘れられないその読めない表情。
左目を前髪で隠したまま、私の姿を見て小さく笑った。
後ろ手に扉を閉める雷暝に私は後ずさった。部屋の中に私が使えそうな道具は無い。
壺なんかを投げたところで、どうせ避けられる。
私は唇を噛み締めて油断しないようにする。
私の衣装が変わっているのも雷暝のせいだろうか。

私の服は、ナイフは、どこだよ。

「体調はどうだ?」

私は答えなかった。そんな様子の私に近づいて、私が掴んでいたシーツを引きはがす。
大胆にスリットが入った私のドレスは、チャイナドレスを加工したものに近いようであった。
私の足が見えてしまうので極力足を閉じる。
私の耳に違和感があるので、どうせイヤリングでもついているんだろう。
私は精一杯雷暝を睨みつける。
雷暝は赤いシーツを投げ捨てて、私の姿を眺める。

「良く似合ってるな」

にやりと笑いながら私を見下ろし、そして頭を撫でてきた。突如、ずきりとした痛みが私の頭を刺す。
廊下で出会った、あのマリンブルーの男。アイツに意識を奪われたんだった。
私はその手を払う。

「そういうの、要りません」

私の掃われた手を一瞥して、雷暝はベッドに腰を下ろした。
天蓋付きの豪華なベッド。すべてが赤く着色されて居るので、もしかしたら私のためにつくられたのかもしれない。
なんて思ってしまう。だって、嬉しい。
こんな赤ばかりの空間に居られるなんて。でも浮かれてばかりではいられない。私はライアーのところへ帰らなくちゃいけない。
こんなところ早く抜け出さないといけない。

「真面目に答えてくれませんか。私を何で連れ去ったんですか。目的はなんですか。ここは一体どこなんですか」


〜つづく〜


三十話目です。
チャイナドレスって素敵です、好きです。
チャイナドレスを着ているイケメンが好きです。
雪羽がやっとヒロインっぽいです!!