複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.285 )
- 日時: 2013/01/19 16:31
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)
32・It is a pleasant sensation that you get damaged.
今のは本当にカチンときた。
私の事をすべて知っているかのような顔をしやがるなんて。最低すぎる。
私は私でしかない。私はすべて私でできているのだから、私について私が知らないことは無い。あるはずが無いのだ。
そして、私のことを知って居るって言っていいのは私と親しい人間だけだ。雷暝のように私と会って全然経っていないで初対面に近い状態でそんなことを言うなんて最低でしか無い。
私が不機嫌そうにしても私を見下ろしてにやにやするだけの雷暝は本当に最悪だ。私の様子を眺め楽しそうにしやがって。
「そろそろゲームが始まる」
私は眉を歪めた。
私の手を私の頭上で一つにまとめて、片方の手で私の髪を撫ではじめる雷暝。
私は抵抗はしなかった。別に襲いたいなら襲えばいい。私はそんなことでダメージを受けることは無い。
そんなことよりもさっきのように知ったかぶりされる方がムカつくし、取り乱してしまう。
私の表情を舐めるように眺めている雷暝の右目をつぶしたくなってくる。
私は聞き返すこともしなかった。雷暝が喋りたいのなら勝手に喋ればいいのだ。
適当に喋ってろ。
「ライアーがお前を迎えに来る。カーネイジ・マーマンがパルを助けに来る」
「カーネイジ・マーマン……?」
聞き返さないと決めていたのに私は思わず声を出してしまった。
私が反応することをまるで知っていたかのように雷暝が顔を近づけてきた。
雷暝の顔も結構整っているけれど、私はそんなことよりも雷暝への不快感でいっぱいだからそんなことはどうでもいい。
「そう。パル・トリシタンは自分たちが生きるために人を殺すカーネイジ・マーマンの一員だ」
囁くように、私の脳みそに染みわたるように雷鳴が言う。
ライアーが言っていた。カーネイジ・マーマンを追って居ると。だからあれは、ライアーにとっての敵だったんだ。
ライアーが教えてくれなかったのは、私がカーネイジ・マーマンの事を知って余計なことを考えないようにするためだろうか。
私は瞳が揺れそうになるのを必死でこらえる。
パルはそんなに悪いことをしていたなんて。
でも、生きるため。
生きるためって、つまりはどういうことだろうか。理由があっても、人の人生を奪う事はいけないかもしれないけれど。でもそれをしないとその人の人生が失われるとしたのなら。
私は頭の中が熱くなるのを感じた。こんなに難しいことを考えさせるなんて。
雷暝にのまれてはいけない。私は顔を引き締める。
「ワタシは面白いことが好きなんだ。だからさお前のためにライアーや、パルのためにカーネイジ・マーマンが傷つくなんて楽しいことを企画してみた」
〜つづく〜
三十二話目です。
HUNTER×HUNTERのOPとEDをききながら書くと全然進まないのでお勧めです。本当に進みません。なつかしすぎて泣きそうになるくらいです。