複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.288 )
- 日時: 2013/01/23 18:24
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)
35・That for which it asks is peaceful.
背中を叩かれて、顎を乱暴に掴まれる。無理矢理に上を向かされる。
でも絶対にめげたりなんかしない。鋭い眼光を放つライトグリーンの瞳でマリンブルーを睨みつけた。
マリンブルーは歓喜したように口笛を小さく吹いて俺を挑発しているかのようににやりと笑ってみせる。
俺は体を捻ってマリンブルーの指に噛み付いてやろうとしたがマリンブルーが俺の鼻を摘まむ方が早かった。行動を止められて思わず舌打ちをした。
マリンブルーは舐めるように俺を眺めた後突然掴んでいた顎を離す。いつかのように後ろ手に手を縛られて居るので俺は大した抵抗もできずに鼻が引っ張られるのに耐えた。
マリンブルーは鼻を摘まんでいる手で俺の顔を引き寄せた。
俺は自分が間抜けな格好をしているのに気付いてはいたが、それでも精神は犯されていないと確信していた。
どうにでもなれとか決して思っていない。
俺は絶対に逃げ出してやるんだ。
雪羽は無事だろうか。俺のせいで巻き添えを食らって居る雪羽。
怪我をしていなければ良いが。アイツは女なのだから。
そう。アイツは一人の女だ。
それでしか無い。
俺が床に這いつくばっているのを楽しそうに眺めていたマリンブルーは目の前のソファに座っている女の髪を撫でる。
左肩に大きな損傷を追っている女。
固い床ではなくカーペットが敷いてあるだけましだろうか。
まあ少しは苦しくない。
俺は軽く咳き込みながらマリンブルーの言葉を待った。
「パルちゃん、治癒魔法できるでしょ? それでコイツ、あ、ロムっていうんだけど。この女の肩を治してやってくれないかな?」
女は栗色の髪を少し斜めで高い位置でまとめベルト状の髪留めで止めていた。俺はそんな女を必死で見上げる。
強い瞳の色が、アシュリーに似ているかもしれない。
アシュリーは今元気かな。銀たちに守られているってまた自分を責めたりして居ないかな。
そんなことないよ。何時だって俺たちが一緒に居られるのはアシュリーのおかげなんだ。
もしも連れ去られたのがアシュリーだったなら、俺は迷わず助けに行く。
そんな存在かな、俺も。
銀たちは俺を迷わずに助けに来てくれているかな。
「誰がっ」
敵の回復を図るか。
そういうつもりだったのに、マリンブルーが踵で俺の背中を思い切り踏み付けてきたので言葉が続かなかった。俺は盛大に顎を床にたたきつけてしまった。
その衝撃で口内を歯で切って、少し鉄の味がにじむ。
「ねぇ、パルちゃん。いいことを教えてあげるよ。君のことを助けに来る人間が居る。三人だ。雷暝様はみんなでゲームをするって言っているんだ。君を賞品としたゲームを、さ」
〜つづく〜
三十五話目です。