複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.299 )
日時: 2013/02/07 16:18
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: KRYGERxe)



44・The end which goes and comes.


パルとソウガのやり取りを一歩引いた所で眺めていると、ソウガ持っている余裕が少し揺れているのが分かる。
なんでこんなに必死になりながらも余裕の表情を守ろうとしているのかは全く分からない。私たちに決して弱い表情を見せたことのない彼は、パルの前だと少し脆くなる。
パルは強い。きっと自分に満足はしていないのだろうけれど、それでもそれを感じないように乗り越えるようにしようとしているか、めげない。そんな彼を見ていると、私の目の中にまで自分の弱い場所が見えてくるようだった。
私は弱い。そんなのは分かっている。軽い火傷のようになってはいるけれどしっかり形を取り戻した左肩。
それを撫でていると、アスラのことを思い出す。彼は機械のように冷静でそして速かった。私たちの行動を邪魔して来た。
きっとゲームにも参加して来ると思う。
これは勘じゃない。確信だ。彼はきっと私たちと戦う。

不安で、仕方がないなんて。
私は勝って来た。ヒダリを動かして戦って。自分の手を一切汚すこともなく勝って、そして生き残ってきた。
今日まで息を途切れることは無かった。でも心臓が冷えている。今日だけは、最近だけは。
どうにも自信がない。
私を迷わず投げ捨てたレッドライアーがやってくる。あの女を救いにやって来る。
ヒダリが居ながら逃げると言う選択しかできなかったアスラがやってくる。雷暝様を止めるためにやってくる。
そしてパルが居る。ソウガの余裕を少しでも崩してくるパルが居る。

私だけなのかな。こんなに不安になっているのは私だけなのかな。そうだったらいい。
みんな、何にも考えずに動けばいい。いつも通りに雷暝様の玩具として動けばいい。
それでいいじゃないか。

私も。


 + + + +


更に質問をぶつけてみるとレジルは切なそうに笑うだけだった。それ以上何も言わずに私の黒髪を撫でてくるのだった。
彼の髪は白い。恐ろしいほどに白いが、その城を拒絶するように色とりどりのヘアピンが添えられているのでもったいないと思う。

雷暝は一体何をする気なのだろうか。レジルはなんで私にやさしくしてくれるのだろうか。
そう思って口を開いた時、扉が開いた。
驚いて目を向けると、赤いこの部屋に似合わない真っ黒のコートを着たヒダリが立っていた。
レジルがそれに気付いて立ち上がる。
私は顔をしかめた。
ヒダリだ。私たちを狙ってきたヒダリだ。でもコイツは喋らない。自分の意思をどんな手段でも表現しない。

「レジルさん……」

「ねぇ。俺はできれば女の子は傷つけたくないよ。君が逃げたのなら俺だって君を追わなくちゃいけなくなる。それはしたくない。逃げるなら、上手にね」


〜つづく〜


四十四話目です。
戦闘シーンが苦手なんですけどどうしましょうか。