複雑・ファジー小説

Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.306 )
日時: 2013/03/06 16:15
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)


49・A game start is grandly.


「ようこそ」

ドームの入り口は大きな扉だった。派手な装飾をしらない簡素な黒色の扉。
俺たちを待ち構えていたのは扉の隣に立っていたのはロムだった。以前会った時と変わらない栗色の髪を一つにまとめて、ベルト状の髪留めをしている。
彼女の姿を見つけた途端に俺は眉を潜めて不快感を露わにした。コイツのせいで、カンコの赤女も酷い目にあった。ジャルドも舌打ちをしてしまっている。
彼女は綺麗にお辞儀をして、片手で俺たちに入場を促した。重々しい扉は自動で開いていく。
俺が振り返る前に達羅たちは迷うことなく入っていく。俺も続いた。
みんなが居る。頼もしいじゃ無いか。俺は迷いたくない。躊躇いたくない。

通された部屋はさほど趣味が悪くない部屋だった。ソファとテーブルがあるし、くつろぐことはできそうだ。
警戒の色を見せる俺たちを無視するかのように燕はソファに腰を下ろす。扉を見張るようにして立っていたロムは片耳に手を添えている。何かの指示を待っているのかもしれない。

「はじめるならさっさとしてくれないか」

折角出向いてやったんだ。アスラの言葉には怒りがにじみ出ている。
何にそんなに怒っているのだろうか。赤女を助けるために力を貸してくれているコイツを悪く言うつもりはない。
カンコは何を考えているのかわからない瞳でロムを見つめていた。

耳に集中していたロムが顔を上げる。
彼女の瞳は相変わらず鋭い眼光を宿している。驚いて、引きそうになる。彼女が何を考えているのか嫌でもわかる。
敵意がむき出しで、生きる気満々なのだ。コイツは生に貪欲だ。生きるために必死何だ。その方法が雷暝に縋りつく事だということは間違っていると思う。絶対に間違っている。
コイツは俺に似ているかもしれない。というか、雷暝の手の中に居る奴は全員似ている。
生きることをあきらめている奴も居るかもしれない。でも俺に似ている。
自分に迷っている。だけど俺には守りたいものがある。ロムにだってあるかもしれない。守りたいものがあるから、生きたいのか。それとも守られているから生きたいのか。
俺は前者でありたい。
俺は確かにクオやユコトに守られている。俺が今こうして生きているのもアイツ等のおかげだ。
俺は守りたい。赤女も、クオもユコトも、ジャルドもカンコも、凪だってミーニャだって。
もう一人になりたくない。俺の本当の名前を呼ぶ人間が居なくても。俺をライアーでしか求めない人間しかいなくても。

「……心配しなくてもすぐに始まる」


〜つづく〜


四十九話目です。
ウォーミングアップをお願いします。

ちょっとテニプリの白石さんがイケメン過ぎて人生詰んでいるんですけどどうすればいいですか。