複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.309 )
- 日時: 2013/02/17 17:03
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
52・It presses and resists coming regret.
本当に、生意気な奴らだ。
私たちに勝てるわけないのにさ。私たちはずっと勝ってきた。
自分の命を守るために。自分の場所を守るために。
私たちのことをアイツらが分かるはずがない。雷暝様は私たちのことを信じてくれているのだ。裏切るわけにはいかない。
ずっと守ってくれていた。掌の中に閉じ込めて、愛で縛って。それで守ってくれていた雷暝様。
だから負けるわけにはいかない。雷暝様は私たちのことを玩具としか考えていない。
それでもいい。それでも良いから、生き残りたい。戦いたくはない。でも生き残りたい。意地でも。
背負っているものが違うんだ。
仲間を助けに来たって言ったってそんなの、自分の命の前じゃあゴミだ。ゴミでしかない。
そんなことも知らないで、私たちと戦おうなんて。
違うんだよ、格が。人生のレベルが。
「…………」
のんびり歩いていると、廊下の途中で男にぶつかった。黒いパーカーの生地の感触でそれが誰の物かすぐにわかった。
「ヒダリ……雷暝様のところに居なさいって言ったよね?」
私よりも雷暝様の方が大切なのに、この男は全く分かっていない。
私の瞳を覗き込むようにしているヒダリの表情は全く読めない。でも分かる。コイツは自分で選択してこの行動をとったのだ。
あのヒダリが。有り得ない。
コイツは何も考えることができない。思考という概念がない。コイツは人間として重要な物が欠けているんだ。
だから私が指示をする。
私が居ないとコイツはゴミでしかない。逆に、動いてくれないコイツが居ないと私はゴミだ。
結局、みんなゴミなのかもしれない。
お互いに依存して、利用しないと生き残れない。ゴミ。
「どうしてあなたってちゃんと行動できないの? もしかして、ゲームの前だからって私に会いに来たの?」
ヒダリは反応しない。それを知っていたのに何でこんなことを聞いたんだろう。
自分の行動ができない。
なんでかイライラする。すごくイライラする。思い通りにいかないこの男。思い通りにいかない自分。
すべてに。早く終われ。こんなゲーム早く終われ。
アイツらのせいだ。アイツらが、あんな。あんな目をしているから。分かっているんだ。分かっているんだよ。こんなところに居たって仕方がないって。それをまるで自覚させようとしているかのように。
そんな目をして、私を追い詰める。追いつめられているなんて、そんなはずないのに。
アイツ等は何とも思っていないっていうのに。だから。だからちゃんとしていろ、私。
「……まぁ、いい。本番でへましなければ、それで」
〜つづく〜
五十二話目です。
右手が痛い。