複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.314 )
- 日時: 2013/02/24 21:45
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
57・The battle in which it does not lose is your sake.
パルの仲間が保証してくれる。そう言った。
彼のことを信じようと決めた訳じゃない。疑いたくはない。一緒に逃げてきた相手で、こうやって勇気づけてくれる。
力強く頷いてみせるとパルは安心したように笑った。私よりもきっと年下なのに、しっかりとしていると思う。
大丈夫だ。私は大丈夫。いろんな人から言われてきた言葉だ。このままではいけないと思うのに、この言葉に甘えて立ち止まる事をしてきた。
だけど、今は違う。
立ち止まるんじゃない。みんなを信じる。それはすごく難しいことなのだと思う。
私はバカだから。最近はちゃんと考えることができてきていると思う。守られるだけじゃ嫌なのだ。
私をライアーは助けに来てくれる。きっと。
ドアが開いた。
開けたのは、ロムだった。私を飛行船から落とした張本人。奥歯がぎちりとなった。
私の態度を見てパルが不安そうにしてからロムを睨んだ。ロムの後ろに立っているのは人形のようなヒダリ。
許したくない。熱くなることは無い。ここで怒ったって仕方がない。
ライアーは、ライアーたちはきっと勝つ。必ず勝つ。私たちを救ってくれる。
だから。
「移動する。ちゃんとついてきなさい」
ロムはヒダリの目を見つめると、廊下を進み始める。
ヒダリが無駄のない動きで私とパルの両腕をまとめて後ろ手に拘束する。
暴れることはしない。私は口を動かした。
「貴方たちが何をしたいのか、私には全く理解できません。だけど絶対に負けません。私だって負けません」
出来るだけ、声が震えないように。
早く、ライアーに会いたい。きかないといけないんだ。
私は、まだ貴方の側に居ても良いですか。こんなバカだけど。何のとりえもないけど。
でも。
自分の意思に、願いに、抗いたくはない。後悔をしたくない。
「……私たちにだって、負けられない理由がある」
ロムが振り返って、私を視線で刺した。
揺るぎのないそれに、嬉しくなった。
自分の意思を持っているんじゃ無いか。雷暝に操られたり、嫌なのにしているわけじゃないんだ。
私の口元が緩むのを見てロムは不快そうな表情を作った。
私たちは歩きだした。目をつむることはしなかった。
「お前たちにも、守りたいものがあるのか」
「黙れ」
ロムの言葉は鋭い。パルは引かなかった。言葉を紡ぐことをやめなかった。
パルの声には不思議な力がある。常に何かを呼んでいるかのような声なのだ。
まるで、いつでも魔術を使っているかのような声。
「俺たちは、負けない。絶対に負けない。たとえ、お前たちに理由があっても」
〜つづく〜
五十七話目です。
そろそろかもしれないです。
そろそろばかり言っていますね。
勉強をしておきます。