複雑・ファジー小説
- Re: 赤が世界を染める、その時は。 ( No.318 )
- 日時: 2013/03/09 14:38
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: JbG8aaI6)
59・Compensation for obtaining.
人らしいってなんだ。分からなくなっていた疑問だ。
なんだっけ。人らしいってなんだっけ。
私たちはいつの間にか見失っていたのだろう。自分が自分である事に必死で、人間であることをやめた。
ヒダリもそうなのだろうか。ソウガは、レジルは。ガーディアンは。
私は仲間が欲しい。手を取り合うまでは行かなくても、同意してくれる人が欲しかった。
一人は怖いって最近思うようになった。
赤い女はまっすぐに人を信じている。そんなコイツを、バカだって一言で済ませることが出来るはずなのに、どうにもできなくて、つらくて。
つらいんだ。なんで、つらいのかな。
分からないよ。どうしてだっけ。
何のために私たちが戦っているのか。ここで生き続けなければならないのか。
見失いかけている。
求めることはできなくなった。
選択肢は、残されていないのだ。
+ + + +
俺たちに移動を促したのは、少年とも少女ともとれる中性な顔をした小さな子、ガーディアンだった。口数は多くなかった。達羅がそいつの背中についている羽に関して質問をしても、迷惑そうに眉を潜めるだけで何も言わなかった。
「ちゃんとついてきてくださイ」
まるで台詞を言うかのような硬い口ぶり。
クイーン・ノーベルの城であった時はそれほどでもなかったのに、今は何かに縛られているかのように重い物を背負っているようだった。
ガーディアンの歪んでいる性別が分からない顔を見ていると、クオを思い出す。
アイツは、いつも楽そうな幸せそうな顔をしていた。
クオの性別は教えてくれないし、ユコトとどんな関係なのかも教えてくれない。なんで俺を拾ってくれたのかも教えてくれない。
元気でやっているかな。
俺たちは大人しくガーディアンの指示通りに動いて、円型の草も生えていない広場のような物を見下ろせる場所に案内された。椅子があって、そこに座っていても広場の様子がわかるほど、それは広かった。
向かい側にも同じような場所があることから、ゲームの内容を想像することができる。
張り詰めた空気の中、向かい側の柵の向こうにロムにつれられた赤女とパル・トリシタンが現れた。
俺の姿を確認した赤女が、嬉しそうに笑う。困った顔をしなくて、本当によかった。
達羅も、パルに向かって大きく手を振っている。
『いらっしゃい』
響き渡る声は確かに雷暝の物だった。
ガーディアンの姿はもうないくなっていた。
負けたくない。その意思は変わっていない。だから動じなかった。誰も動じなかった。赤女も、パルも。
分かっているんだ。俺たちを信じているんだ。
『ゲームのルールを説明するから、よく聞いてね』
〜つづく〜
五十九話目です。
最近ファンタジーの気分じゃないんですねー……。